2024年11月21日
人事データ分析のシステムは、企業の競争力を高めるための重要なツールとして注目されています。私が最近調査した結果、これらのシステムの進化と多様性に驚かされました。今回は、そのシステムの動向と私が感じたことをお伝えしたいと思います。
まず、人事データ分析とは何かを簡単に説明します。これは、従業員のデータを収集・分析し、組織のパフォーマンス向上や人材戦略の最適化を図る手段です。最も基本的な方法はエクセルを用いた分析ですが、近年ではBI(ビジネスインテリジェンス)ツールが普及しています。これらのツールは、データの収集、加工、可視化を容易にし、特に「市民BIツール」と呼ばれる直感的に操作できるものが増えています。これにより、専門的なスキルがなくてもデータ分析が可能になり、ハードルが大幅に下がっています。
さらに、BIツールには人事データ分析用のテンプレートを提供するベンダーも存在します。これにより、企業は迅速に分析を開始できるようになっています。また、タレントマネジメントツールやHCM(ヒューマンキャピタルマネジメント)スイートと呼ばれるシステムも、人事データ分析の一部として利用されています。これらのツールは、適性検査やエンゲージメントサーベイといったデータを組み合わせ、ハイパフォーマーの特定や適正配置、離職分析を行うAIを提供するベンダーも存在します。
人事データ分析には成熟度があり、簡単な分析から高度な統計分析、ベンチマークを用いた比較、さらには予測や処方的な分析まで多岐にわたります。企業は自社の状態を見極め、どのレベルの分析が必要かを判断することが重要です。分析する対象となる人事データがどれくらい取得でき整備が可能なのかは言うまでもないですが、分析結果を活用するためには、組織自体の制度や文化が整備されていることが前提となります。組織の成熟度を考慮しながら、人事データ分析とシステムを進化させることをお勧めします。
また、生成AIが直接人事データ分析を行うソリューションはまだ一般的ではありませんが、分析用のデータを生成する技術は登場しています。生成AIが社員の属性やプロフィールを作成することで、より価値のあるデータを生み出すことが可能です。例えば、アンケートや資格・プロジェクト経験・勤務データなどをインプットとして、生成AIが個々の社員のプロフィールを作ることができます。多くの企業がAIを利用している中で、差別化の鍵は元データの質にあると考えられます。
最後に、人事データと他のデータを組み合わせる動きが見られますが、特に健康データとの組み合わせは、経営者や従業員の関心が高い分野です。人的資本情報の開示に関しては、現時点では日本においてシステム的な差別化要素にはなりにくいですが、今後の動向に注目が必要です。
このように、人事データ分析のシステムは多様化し、進化を続けています。企業は自社のニーズに合ったシステムを選び、効果的に活用することで、効率よく競争力を高めることができるでしょう。
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- 執筆者紹介
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デジタルソリューション研究開発部
シニアITリサーチャー 木下 和彦