英国労働党のハネムーンは苦い思い出に

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2024年10月25日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

英国では2024年7月に実施された総選挙での労働党の大勝、政権交代から100日が経過した。政権交代後の100日間は「ハネムーン期間」として、高い支持率を維持しやすいと一般的に言われるが、これに反して労働党政権の支持率はこの100日間で大きく低下した。YouGovの世論調査によれば、政府を「支持する」と回答した割合は7月末の29%をピークに低下し、最新の調査(10月14日時点)では18%に留まっている。15%前後で推移していた保守党前政権の支持率に比べれば幾分高いものの、労働党政権に対する評価は極めて厳しい。

政権支持率の低下には、寄付金を巡るスキャンダルの発覚が大きく影響しているとみられる。スターマー首相をはじめとする複数の労働党議員が、過去に衣服やコンサートチケットなど、多額の寄付を支持者から受け取っていたことが明らかとなり、スターマー首相の真面目で誠実なイメージは大きく悪化し、これが労働党全体に対する信頼感の低下に繋がった。

こうしたスキャンダルによって、労働党の政策運営に対する国民の監視の目はより厳しくなっている。労働党は政権交代直後から保守党政権時代の歳出の検証に取り組んだ上、「厳しい判断」が必要であることをしきりに強調してきた。10月30日に公表が予定される、2025年度の財政政策や税制改正の方向性が明らかにされる秋季予算案では、歳出の削減、増税が示される公算が大きい。労働党は、保守党前政権下で編成された2024年度予算における約220億ポンドの財源不足、「ブラックホール」を埋める必要があるとして、責任を保守党に転嫁するよう努めているが、それでも労働党に対する一定の批判は免れないだろう。労働党は総選挙時に付加価値税、所得税、国民保険料の引き上げは行わないと明言しており、具体的にどこに財源を求めるかが秋季予算案の最大の注目点である。

一方、政権交代以降、財政再建を強調するあまり、労働党が目指す政策が分かりづらくなっている感は否めない。英国における財政再建の重要性は、とりわけ2022年9月のトラス政権下での「ミニバジェット」とそれに伴う金融市場の混乱以降、政府や金融市場では強く意識されており、財政再建を目指すこと自体はもちろん悪いことではない。だが、保守党からの変化を求めて労働党に投票した国民にとっては、増税や歳出削減によって確保した財源をどのように使うかが、財政再建そのものよりも重要だろう。労働党は公共サービスの立て直しなどを掲げているが、その内容は現時点ではいまひとつ具体性に欠ける。財源確保とセットで、英国民の生活改善や英国経済の成長に資する予算の使い道を提示することが、政権支持率の回復には必要と思われる。

英国の政権支持率の推移

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橋本 政彦
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