国連・未来サミット「未来のための協定」が意識する2030年以降のSDGs

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2024年08月26日

2015年に採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、2030年までに世界が抱える社会課題(環境問題を含む)を包括的に解決しようとする、野心的な目標である。2024年6月に国連が公表した“The Sustainable Development Goals Report 2024”では、SDGsで掲げた17の目標の下に設定された169のターゲットのうち、データの収集や分析が可能な135のターゲットについてその達成状況を分析した結果を公表している(※1)。それによれば、2030年の達成に向け順調に進捗しているターゲットは17%にとどまる。進捗しているものの、2030年の目標達成には不十分であるターゲットが48%、停滞しているターゲットが18%、後退しているターゲットが17%という状況である。

順調に進捗しているターゲットが比較的多い目標としては「目標7 すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」「目標12 持続可能な生産消費形態を確保する」が挙げられる。一方で、後退しているターゲットが多いのは「目標2 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する」や「目標14 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」などである(※2)。

国連は2024年9月にニューヨークで未来サミット(Summit of the Future)を開催予定だ。未来サミットでは、各国の政府間で協議された「未来のための協定(Pact for the Future)」の採択が予定されている。同協定は、「持続可能な開発(Sustainable Development)とそのための資金調達」「国際平和と安全」「科学・技術・イノベーションとデジタル協力」「若者および将来世代」「グローバル・ガバナンスの変革」の5つの大項目から構成され、それぞれの項目において各国がとるべき「行動」が示されている(※3)。

同協定の1番目に「持続可能な開発とそのための資金調達」が掲げられた背景には、SDGsの達成に向けた進捗状況が芳しくないことに対する危機感がある。「持続可能な開発とそのための資金調達」の「行動12」には、2030年までの取組みを加速させることに加え、2030年以降の計画策定についての言及がある。2030年以降の取組みをどのように進めるか、2027年9月に開催する持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(High‒level political forum on sustainable development: HLPF)で検討するとのことである。今後、2027年のHLPFに向けた議論が本格化していくことが予想される。

(※1)34のターゲットは十分なデータがない、分析ができていない状況にある。
(※2)外務省仮訳「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」より。

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太田 珠美
執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 太田 珠美