書籍『社債市場の未来』出版に向けて

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2024年07月31日

  • 大橋 俊安

9月に東洋経済新報社より拙著『社債市場の未来~企業金融と資産運用の多様化に向けて』が上梓される予定だ。本書は、今まで日本では欧米に比し活発に利活用されてこなかった「社債」に光を当て、その現状と課題を整理しつつ、日本の社債市場の明るい未来を展望する目的で執筆した。

日本の企業金融は、銀行ローン(間接金融)優位の状況から変わっておらず、社債(直接金融)はまだまだ未成熟で未発達。一方、資産運用では「貯蓄から投資(資産形成)へ」と「お題目」のように唱えられて久しいが、未だに実現していない。なお、この「お題目」では、預金から株式投資への二元論で語られることが殆どだ。

「社債」は、銀行ローンに偏重した大企業金融の多様化に資すると同時に、1990年代後半に現実化したように、万が一銀行の貸出能力が低下するような際には、それを補うことで金融システムの安定化にも資する。また、「社債」はミドルリスク・ミドルリターンの金融商品で、ローリスク・ローリターンの預金から、ハイリスク・ハイリターンの株式への架け橋として、資産形成の多様化にも資する。

このように、社債は企業金融と資産運用の双方の多様化に資する調達・金融商品であるにもかかわらず、残念ながら日本では十分に発達・活用できていない。日本の社債は、コベナンツ(財務制限条項)や社債管理の問題など、様々な古くて新しい課題を抱え、それへの対応もまだ道半ばだ。しかし、本書で紹介するように、ESG化、メザニン化、信用拡大化、デジタル化、リテール化といった社債市場の拡大・活性化に向けた方向性(原動力)は存在している。こうした原動力が課題解決を伴って日本の社債市場を活性化させていくと筆者は信じている。

日本の金融政策が緩和一辺倒からようやく脱し、「金利のある世界」に戻ろうとしている今、「社債市場」の未来を展望することは、資金調達主体である日本企業にとっても、資産運用主体である投資家にとっても時宜を得た企画だと確信している。本書は、現在の社債市場に携わっている発行体や投資家は勿論のこと、今まで関わる機会がなかった、あるいは関わってこなかった発行体(特に上場企業)や投資家の皆様にも是非手に取ってもらいたい。社債市場の現状を知り、また、可能性を見出すことで、資金調達・資産運用に社債を「実際に活用」することを考えてもらいたい。

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