小学生から学んで欲しい人的資本経営

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2024年05月22日

  • マネジメントコンサルティング部 主任コンサルタント 柳澤 大貴

経済産業省によれば、『人的資本経営とは「人材」を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です』と定義されている。つまり企業には個々の従業員の能力や適性を見極めて、その人が能力を最大限発揮できる職場へ配置することが求められている。従業員の生産性を最大化しようとする試みであり、少子化を乗り越えるためには必須のソリューションである。

従業員には自分の価値を最大限発揮できる仕事は何か、を常に考えてもらうことが重要である。こうした習慣は人生の早い時期から身につけると効果的であると考える。可能であれば小学生の授業の一部に組み込むことが理想ではないだろうか。文部科学省においても、『小学生のキャリア教育』を推進しているところである。

はじめは自分がなりたい職業、自分が得意なこと、自分が好きなことをあれこれ考えるだけでもよい。そして疑似体験することだ。本を読む、職場見学やインターシップに参加する、その道のプロの話を聴くなどして、視野を広げることが望ましい。最近は企業も積極的に工場や物流センター、航空機・車両の整備施設などの見学会を開催している。知識や体験が蓄積する過程で、当初の夢や希望が変わっても構わない。この過程で自分が得意なことや、本当にやりたいことを絞りこんでいくことが重要である。

このような経験を積むことのメリットは、自分が本当の自分を知る機会に恵まれることである。例えば自分が好きだと考えていた職業が自分には向いていないと気づく、あるいは関心がなかった職業に興味が湧いてくることもあるはずだ。学生時代にこうした経験を積んだ人は進学や就職の場面において、より効果的な進路選択をする確率が高くなるであろう。

従業員が常に自分の価値を最大限発揮できる仕事は何かを考える組織は、人材と仕事が上手く噛み合い、成果を出しやすくなる。そして従業員の定着率や満足度、企業業績も向上することが想定される。このような好循環が機能し始めると一企業のレベルではなく、国全体の生産性や付加価値の向上につながると考える。

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柳澤 大貴
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マネジメントコンサルティング部

主任コンサルタント 柳澤 大貴