二酸化炭素を出さない生活とは?
2024年03月29日
気象災害が発生するたびに、温暖化の因となる二酸化炭素の排出削減を求める声は強まるばかりである。しかし、二酸化炭素を出さない生活とは具体的にどういうものだろう?筆者は最近、ベトナム山岳民族のひとつモン族が暮らす非電化地域で、それに近い生活様式を観察する機会に恵まれた。
私が訪れたのは、首都ハノイから車で北西に約7時間、棚田で有名な観光地Mu Cang Chaiという街の更に奥地である。山間地の国道を街から1時間ほど走り、山に向かって勾配10%を超える急傾斜の枝道をしばらく進んだ後、現地村人のバイクに乗り換える。そこから山腹に彫り込まれた未舗装の隘路を更に30分ほどバイクで進むと、急峻な山肌に大規模な棚田が連なる「天空の集落」とも表現すべき雄大な光景が広がる。車は容易に近づけず、季節や天候次第で道が閉ざされるような山間地であるため、未だに送電網が届かず、住民は電気に頼らない昔ながらの生活を続けてきた。
彼らの生活は、温暖化ガス排出とはほぼ無縁である。炊事・暖房の熱源は薪や枯れ枝の「バイオマス」であり、農耕用動力も牛や水牛などの家畜が主である。夜間の照明は必要がない限り使わず、基本は日の出とともに起き、日が落ちれば寝る。衣料素材も天然の自家製がほとんどで、畑に麻を植え、麻の皮を手で撚って糸にし、人力で紡ぎ、機織機で手織りし、栽培した藍を煮て染料を作り、手で刺繍・縫製して(足踏みミシンを使うことも)、約1年がかりで家族用の数着を完成させる。この様子を紹介した絵本の中で、娘のスカートを新調する際に「まず、麻の種を蒔くのよ」と母親が教える場面を見たときは、言葉を失うほどの衝撃を受けた。彼らの温暖化ガス排出といえば、週に1-2度、街まで出かける際の小型バイクの利用や、田畑での小型耕耘機の利用程度であり、それも周辺の広大な森林や草原が苦もなく吸収する。都市部と比べて生活の利便性は遥かに劣るが、生活物資のほぼ全てが環境中で循環している。
もちろん、いくら温暖化が深刻であっても、先進国等の人々が、化石燃料による現代文明の恩恵を捨て去って上記のような生活を真似られるとは思えない。それでも、彼らのような生活様式を知ることは、環境保全に伴いうる生活上の不便を具体的に認識し、「そこまではムリだけれど、この程度なら」というかたちで、個々人が実践できる範囲を身近に考えるよい契機になるだろう。例えば筆者のような普通の現代人ならば、まずは無駄な暖/冷房を控え、早寝早起きを心掛け、近距離移動にはできるだけ歩くか自転車を使う、あたりから始めることにしようか。
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マネジメントコンサルティング部
主任コンサルタント 天間 崇文
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