日本の株式市場上昇の持続性が試される2024年

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2024年02月02日

2024年に入り、日本では好調な企業業績などを背景に、1月15日の日経平均株価が1990年2月以来、33年11カ月ぶりとなる3万6,000円台に乗せた。さらに1月23日には37,000円目前まで迫った。2024年年初の日本の株式市場の好調を、年間を通じて支えていくための構造的なポイントは、大きく2つあると考えられる。

一つは、1月から始まった「新しいNISA(少額投資非課税制度)」(新NISA)が「貯蓄から資産形成へ」の本格的なシフトを進めていくことへの期待である。ただし、現状では家計の金融資産残高に占める預金残高は依然5割を超えている。日本銀行が昨年12月20日に公表した資金循環統計(速報)では、昨年9月末時点で家計の金融資産残高は2,112兆円、そのうち預金残高は1,113兆円(前年比1.2%増)と全体の52.5%を占めている。他方、投資信託は101兆円(構成比は4.8%)、株式等は273兆円(同12.9%)となった。市況の上昇もあって、前年比では、それぞれ17.4%、30.4%増加している。新NISAでは年間投資枠の拡大(一般NISAの120万円は成長投資枠の240万円と2倍に、つみたてNISAの40万円はつみたて投資枠の120万円と3倍に)が図られている。これらを踏まえると、2024年には個人投資家による日本株投資が増加する可能性が高い。

もう一つは、昨年の市況上昇の要因となった、上場企業の企業価値経営の取り組みにおける具体的な対応策の開示である。2024年1月からは東証が、プライム市場とスタンダード市場に上場する全ての企業を対象に、低PBR改善をはじめとする資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて、具体的な改善策や対応策を開示した企業の一覧リストを毎月公表することになった。1月15日、その第一弾が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示状況として公表された。それによれば、2023年12月末時点で「プライム市場の49%(815社)、スタンダード市場の18%(300社)が開示(検討中を含む)」している。さらに、プライム市場の3月期決算企業に限定すると「59%(673社)が開示(検討中を含む)」しており、2023年7月時点の31%から倍近くまで増加している。東証は、開示する企業数の増加を促すとともに、今後は投資家・株主の視点から高評価を得た事例を公表し、企業の開示の質の改善を促進していくことを予定している。こうした取り組みにより、日本企業の経営改革に対する姿勢を継続的に評価する動きや、日本株全体を底上げする動きにつながっていくことが期待できる。

一方、日本の株式市場のボラティリティが高まる可能性も否定できない。その背景として、2024年には米国で金融政策の順調な緩和が進み、景気がソフトランディングするシナリオが見込まれているものの、実際には金融引き締め継続の可能性が残り、このシナリオの実現が依然不安定なことがある。このため、景気のソフトランディングシナリオが崩れた場合、その反動が米国のみならず、日本の市場にもマイナスの影響を与える可能性が残る。

いずれにしても、今年は古くて新しい構造的な課題である「貯蓄から資産形成への本格的なシフト」と「企業価値経営の定着」による日本の株価上昇の持続性が試される1年となろう。

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内野 逸勢
執筆者紹介

金融調査部

主席研究員 内野 逸勢