ディスカバー・ジャパン再び -投資先として魅力的な国へ-
2023年11月22日
一人当たりGDP(国内総生産)、国債の格付け、HDI(人間開発指数)のいずれも、日本を含めたアジア諸国の中で最も高いシンガポール。コロナ禍が始まる前年の夏、同国を訪れる機会に恵まれた。同国で働いている家族が、素敵なシンガポール人と結婚することになり、家族の顔合わせが開催されることになったためだ。
同国では、キャッシュレス決済やライドシェアは無理なく生活に溶け込んでおり、計画的に開発された地下空間や張り巡らされたMRT(都市鉄道)によって、熱帯雨林気候下においても快適に過ごすことができるようになっている。ゴミ一つなく綺麗な街並みの中で、洗練されたサービスを受けることができる環境は、東京の生活よりはるかに機能的に感じた。
そして先日にはシンガポールでの顔合わせ後、コロナ禍に見舞われ延期を余儀なくされていた結婚式及び披露宴が、都内の神社で満を持して執り行われた。シンガポールでは親族の会社関係者まで招待することが通例のようで、大勢の招待客に参列いただいた。一連の催しは双方の伝統に配慮した、神前式やティーセレモニーを交えた盛大で国際色豊かなものとなった。なお、会場を初詣先としても有数の人気神社としたのは、先方の強い希望によるもので、事前の打ち合わせの際も家族で来日いただき、式には着物でご参加、その翌日には関西まで足を延ばして、日本観光を満喫いただいたようだ。
また、先方のご親族の中には日本の不動産の購入に向けて、具体的な検討を進めている方もいらっしゃった。そんなこともあり、式の前に日本人の日常生活を知ることも兼ねて、筆者の実家にも来訪いただいた。その方は既にシンガポールに不動産を保有しているそうだが、実態は国有地の長期リースであり、外国籍であってもほぼ制限なく保有できる日本の不動産に強い関心を持っていた。
幸いなことに日本での生活は、同国の方々にとても魅力的に映っているようで、参列いただいた現役の上級管理職の方にいたっては、生活拠点を日本に移し、気ままなホテル暮らしを満喫されているとのことだった。シンガポールへのアクセスだけでなく、日本ならではのきめ細かなサービスもお気に召していただいているらしい。
日本の不動産への投資額が、国別で最も多いシンガポール(※1)だが、きっかけは為替や国内事情に起因する、いわゆる経済合理性であることは論をまたない。しかし、内需の拡大が見通せない中、我が国にとっても、こうした対日投資のトレンドが一時的ではなく持続的なものになるよう、日本ならではの観光資源や優位性のある制度を海外の方々に適切に伝えることは大切なことだと思う。
さしあたり、日本の魅力を世界に発信する多言語対応を、伝統的な冠婚葬祭から始めてはいかがだろう。趣旨は少し違うが、ディスカバー・ジャパン(※2)再び、といったところだろうか。
(※1)2023年9月26日付 日経電子版「日本の不動産、シンガポールが海外投資家首位の訳」
(※2)万博後の輸送力を活用し、個人旅行客や女性旅行客の拡大を目指した1970年当時の日本国有鉄道(国鉄)のキャンペーン。コンセプトは「日本を発見し、自分自身を再発見する」であり、その後の日本人の旅行スタイルや旅行商品のあり方にも影響を与えたとされる。
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マネジメントコンサルティング部
主任コンサルタント 浜島 雄樹
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