その成果物は誰が担保するのか

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2023年11月01日

  • データアナリティクス部 主任コンサルタント 岡本 紘和

「ちょっといい?」。我が家の「ちょっといい?」は妻から相談をされる合図だ。筆者は知っている。その話は「ちょっと」では終わらない。普段何気ない会話をするときに「ちょっといい?」という言葉は使わない。この「ちょっといい?」から始まる相談は毎回熟考を要することが多い。なかなか重い相談だ。しかし、この相談を無視してはいけない。覚悟をもって聞く必要がある。それが家庭円満の必須条件だからだ。

仕事に取り組むうえで「覚悟」という言葉をよく耳にする。例えば、上司として部下の責任を負う覚悟もあれば、業務スタイルの変化に伴う新たな責任を負う覚悟もある。つい最近も学生時代の友人から部下の仕事のクオリティが低いとの相談を受けた。最近では先輩社員が部下というケースも多く、若くして役職についた友人も部下の指導は大変なようだ。ハウツー本では「年齢は関係ない」などの記載も見かけるが、現実的には配慮を要すことも多く、気苦労も絶えないだろう。友人の会社では業務効率化のためRPAなどの自動化技術を導入した。しかし、かえって残業時間が増えたらしい。詳細を聞いてみると部下が自動化によりアウトプットの検証をしなくなり、登録した情報(インプット)の間違いに気づかなくなったため上司である友人の確認作業が増えたとのことだ。間違った結果を社内外に展開することはできないため必死に確認しているということだ。

RPAなどの自動化技術は業務を効率化し、品質を均一化することができるため大変有用なツールだ。しかし、業務プロセスがブラックボックス化しやすくなるため何らかの検証作業は必要だ。この検証作業を怠ると成果物を担保することはできない。では、これらの仕事の成果物は誰が担保するべきだろうか。作業者だろうか、プロジェクトマネージャー(チームリーダー)だろうか、それとも部長・課長などの上司だろうか。組織の考え方により成果物を担保すべき責任者は変わるだろう。しかし、誰が責任者になろうがそれぞれの立場・役割で果たすべき責任があり、仕事に取り組むうえで「覚悟」をもって取り組まなければならない。自動化技術の導入により成果物のクオリティが下がっては本末転倒だ。また、自動化を言い訳に検証作業を怠ってはいけない。ツールは責任者になることはできず、覚悟をもった責任者になれるのは人間だからだ。

筆者もコラムやレポート提出が毎回遅延気味だ。しかし、検証作業も含め、今日やりきるしかない。それが仕事に対する覚悟だからだ。

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岡本 紘和
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データアナリティクス部

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