金融について説明するために
2023年08月07日
リサーチ部門の部長の仕事の中で比重が大きいのが、部員が作成したレポートやプレゼンテーション資料のチェックである。経済調査部から金融調査部に異動してからの4カ月で100本あまりのレポートとプレゼンテーション資料に目を通した。
経済調査部ではマクロ経済に関連するレポートが主だった。これに対して、金融調査部では株主還元、自社株買い、税法、金融商品取引法、開示に関する規制、サステナビリティ投資、金融経済教育と非常に多岐にわたっている。初めは略語の一つ一つにつまずいて、その都度インターネットで検索をして意味を確認していたが、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)などはだいぶ聞き慣れてきた。
これまで知らなかった事柄を短期間でさまざま学んでいることになる。ただし、それらについて説明できるレベルには程遠い。「門前の小僧習わぬ経を読む」とは学習方法の一つではあるが、「経を読む」ことすらまだできない。まして、説明するためにはその内容について十分に理解している必要がある。門前の小僧も経を読むことはできても、その意味を説明することはできないはずである。
学ぶ・説明するということに関連して、今気になっているのが金融リテラシーの向上という課題である。リテラシーとは「読み書き能力」「教養」のことで、金融リテラシーとは、金融に関する健全な意思決定を行うための知識といった意味合いである。個々人が金融に関する知識を学ぶことで、金融トラブルに巻き込まれることを防ぎ、また将来を見据えた資産形成に主体的に取り組めるようになることは、非常に意義が大きい。この認識は広く共有されており、学校や職場で金融経済教育に関する取り組みが進みつつあるが、金融について教えることができる人材や教材の不足という問題に直面しているように見受けられる。
例えば学校教育では高校の家庭科で資産形成について教えることになっているが、家庭科の先生は金融や資産形成の専門家ではない。自身が研修を受ける、専門教材を活用する、専門家を招聘するといった対応策が必要になろう。これらの選択肢についてワンストップで対策を検討できるサイトがあれば非常に便利なはずで、それが2024年の設立が目指されている「金融経済教育推進機構(仮称)」に期待されている役割の一つである。ただし、その設立に関する法案が2023年の通常国会での成立が見送られ、継続審議となってしまった。金融リテラシーの向上に遅滞なく資することができるよう、法案が2023年秋の臨時国会で成立することが期待される。
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