経済再開後も高まり続けるサンフランシスコのオフィス空室率

RSS

2023年06月16日

米国のオフィス市場が軟調に推移している。中でもサンフランシスコはかなり厳しい状況にある。図表1はサンフランシスコのオフィスの空室率の推移を示している。2023年3月には空室率は26%まで上昇している。リーマン・ショック後の動きを振り返ると、2010年の17%程度から2019年には5%を切る水準まで低下してきた。米国全体の景気回復や、サンフランシスコに隣接するシリコンバレーに本拠を構えるハイテク産業の勢いを反映している。2020年からは、新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウンや在宅勤務の広がりにより、オフィス需要が急速に減少し空室率は一気に上昇した。

しかし、コロナ禍を脱した景気回復後も、空室率は上昇を続けている。在宅勤務が定着したことにより以前のようなオフィススペースが必要でなくなった企業が、リースを打ち切ったりリース面積を縮小したりする動きが継続しているからだ。また、コロナ禍によってeコマースがさらに普及したこともあり、ショッピングモールなどの商業用施設にも逆風が吹いているといわれる。在宅勤務の定着やeコマースの一段の拡大は商業用不動産市場にとって構造的な問題であり、かつてのようなオフィスや商業施設への需要が戻ってくることは考えにくい。

図表2は商業不動産ローンの満期の分布を示している。米国の不動産向け与信総額は4.4兆ドルとされるが、2023年の返済額は全体の16%に当たる7,280億ドル、2024年は15%の6,596億ドルと、ここ1~2年先の間に大規模な返済が予定されている。空室率の上昇による賃料の減少や2022年からの急速な利上げにより、借り換えができないビル・オーナーも少なからず出てくる可能性がある。こうしたオーナーへのローンが銀行にとって不良債権になる恐れが強まっている。

欧米における銀行破綻による金融市場の激しい混乱や不安の高まりは一旦、沈静化している。しかし、今年から来年にかけて商業用不動産への融資比率が大きい米国の中小規模の銀行には相応のリスクがあることは認識しておくべきだろう。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

山崎 政昌
執筆者紹介

政策調査部

主任研究員 山崎 政昌