オプションマニア

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2023年04月10日

  • 理事 望月 衛

筆者はオプションが好きである。趣味嗜好の話であるから、オプションのどこがよいのか、なぜよいのかを以下に語っても、読者の皆様にわかっていただけるかはわからない。特定の金融商品や証券取引を推奨しているのではない点は最初に強くお断りさせていただく。

ファイナンス全般に成り立つ原則を1つだけ挙げるとしたら、それは残酷な対称性ということになると思う。よいことには必ずよくないことが伴う。損益という切り口でいえば、リスクフリーを基準点として、もっと儲けようとすればもっと儲からない(≒損をする)可能性を受け入れなければならない。リスク・リターン・トレードオフである。その一方で、もっと損をする可能性を受け入れればもっと儲かると期待できるとは限らない。たとえば非システマティックなリスクがそれに該当する。端的にいえば、リスクを取らないと儲からないが、リスクを取ればよいというものではない。

儲かる可能性を求めれば損する可能性を引き受けなければならないという対称性を避け、損をする可能性を引き受けず、儲かる可能性だけを手に入れる方法も存在する。それがオプションである。権利はあっても義務はない、言い換えると、儲かることはあっても(大きな)損はない(厳密にいえば、清算時のキャッシュフローはゼロ以上である)のがオプションである。しかしここにもやはり、よいこととよくないことの対称性は働いており、損はない代わりにオプション料がかかる。損する可能性を、お金を払って誰かに引き受けてもらわなければならない。

その昔、オプションやオプション性を持つ金融商品は、頭脳明晰な人たちが自分の頭の良さを証明するのに使われていた。複雑なキャッシュフロー構造を持つ取引をどうすればプライシングできるか考え、確率微分方程式を解いて適正価格や価格変動の特性を示すのである。ともすると、金融商品を考案してから、どのようなニーズを持った顧客ならその金融商品を必要とするかを考える、というようなことまであった。たとえば、筆者はとあるネット掲示板で「クウォントスワップがほしい投資家とはどんな投資家か、例を挙げよ」という書き込みを見たことがある。その掲示板には見事に答えが提出され、同好の士たちの喝さいを浴びていた。

オプションは買うのがよいのか、売るのがよいのかという議論もよくあった。上場株価指数オプションの清算状況を見ると、オプションはとても高い割合で権利放棄に終わるので、売り続けるのが正しい戦略であるという主張があり、もう一方では、買っていると確かに高い確率でオプション料の分だけ損をするが、損に終わらなかった、つまり儲かった一握りの場合では、オプションを買い続けて何度も権利放棄に終わって積み上がっていた損を、一気に取り返せるぐらい儲かるから、むしろ買い続けるのが正しい戦略であるとの反論がなされていた。おそらく正解はどちらでもなく、日常生活や人生と同じように、両者のバランスを取るべくトレードを行うのが正しいのだろう。

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