米国株式相場のアノマリーと今後の注目点
2022年11月14日
株式相場には様々な格言やアノマリー(経験則)があるが、米国株に関する有名な格言の一つは「Sell in May(5月に株を売れ)」というものだろう。米国株は毎年5月頃に高値を付け、その後は下落するケースが多いからだ。ただし、この格言には続きがあり、正確には「Sell in May, and go away. Don’t come back until St Leger day(5月に株を売って立ち去れ。セント・レジャー・デイまで戻ってくるな)」である。セント・レジャー・デイとは英国で競馬の大きなレースが開催される9月の第2土曜日のことで、「5月に株を売った後、再び買うのは9月の第2土曜日を過ぎてからでよい」という意味になる。
「5月に株を売れ」という格言に関連する米国株のアノマリーの一つに、「株は10月末に買い、翌年4月末に売るのがよい」というものがある。実際に、1970年以降のダウ工業株30種平均の6カ月騰落率を月毎に平均すると、10月末~翌年4月末の騰落率が最も高かった。さらに、10月末~翌年4月末の騰落率を米中間選挙の年、米大統領選前年、米大統領選の年、米大統領選翌年の4つに分けて平均すると、中間選挙の年の騰落率が最も高かった。ちなみに、1934年から2018年までに実施された22回の中間選挙で、10月末から翌年4月末のダウ工業株30種平均が下がったのは1938年の1回だけで、1942年以降は(選挙の結果にかかわらず)すべて上がった。
11月8日に実施された今回の中間選挙の最終的な結果は本稿執筆時点で判明していないが、与党・民主党が少なくとも下院では多数派を維持できず、「ねじれ議会」となる可能性が高い。この結果、長引くインフレ下で支持率の低迷が続くバイデン政権にとって、向こう2年間は政策実行に苦労する可能性がある。一方、米国のインフレ率は引き続き高水準で、FRBの利上げは来年に入っても当分続くと考えられる。このような状況で、今年も米国株の「10月末買い、来年4月末売り」が奏功するには、FRBが利上げを停止する時期が視野入りすることに加えて、米国の景気や企業業績に底打ち感が出ることが必要だろう。
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