QR決済、利用していますか?
2022年08月31日
先日、美術館で当日鑑賞券をQR(Quick Response)決済で買い求めたところ、窓口でQRコードが印字されたレシートを渡され、「読み取り機にQRコードを読み取らせてから入場してください」と言われた。コロナ禍でめっきり美術館巡りをしていなかったとはいえ、てっきり名画か何かが印刷された短冊状のチケットを渡されるものと思っていたので多少驚いた。確かに、この入場方法はコストカットにもなるし、相応の利便性も感じた。
QRコードは、数字であれば最大7,089字を格納できる優れもので、デンソーの開発部門(現デンソーウェーブ)が開発した日本発の発明品であることを皆さんはご存知だろうか。QRコードがこれほどまでに普及した背景には、その利便性もさることながら、敢えて特許申請をせず、多くの人に利用してもらえるような発明者の想いがあったようである。私自身、日常的な支払方法は主にコード決済を利用させてもらっている。
経済産業省の調べ(「2021年のキャッシュレス決済比率を算出しました」2022年6月1日)によると、キャッシュレス決済比率32.5%、その内訳はクレジットカードが27.7%、デビットカードが0.92%、電子マネーが2.0%、コード決済が1.8%である(QRコード決済のほかバーコード決済も含む)。クレジットカードに比べればまだまだ割合は小さいが、2018年のコード決済比率0.05%からここ3年で急速に高まっていることがうかがわれる。
コロナ禍での非接触型決済が選好される追い風も、コード決済が増えている大きな要因であろう。経済産業省は、キャッシュレス決済比率を2025年までに40%程度、将来的には80%にすることを目指しているが、電子マネーやクレジットカードのタッチ決済に加えて、コード決済の普及もそれに寄与していくことが期待されよう。
では、死角はないのか?一つはQRコードのすり替えによる詐欺被害のリスクがある。QRコードを目視しても、どのような内容が記載されているのか人間は確認できない。暗号化されていることがかえって隠れ蓑になる格好だ。ただし、これはQRコードを提供する店舗側がそのリスクを認識し、定期的にQRコードが差し替えられていないかをチェックすることで被害を防げる。
他には、通信障害やシステムトラブルといったリスクもある。システム復旧には相応の時間がかかることが多く、昼食代の支払いなど、少額だが後で支払うことを許されない性質の決済もある。キャッシュレス決済は利便性に加え、衛生面でも時代のニーズに合っているが、解決すべき課題は残っている。まだ、当分、現金の入ったお財布も手放せないようである。
※「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
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