ヴィーガンは断念でもクライマタリアンなら?

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2022年06月22日

  • 経済調査部 市川 拓也

さまざまな場面で「環境」がテーマになる現代にあって、「エンバイロンメンタリスト」(environmentalist、環境保護主義者)という言葉は、多少なりとも聞き覚えがあるかもしれない。しかし、「クライマタリアン」についてはどうであろうか。クライマタリアン(climatarian)とは「『気候』を意味する『climate』と『ベジタリアン』など食習慣を意味する言葉の合成語」(※1)であり、簡単に言えば、二酸化炭素などの温室効果ガス排出による気候への影響を意識して、食事をとる人たちのことである。「日本ではまだ馴染みがないが、アメリカでは外食産業にもそのトレンドが生まれている。」(※2)という。

アニマルウェルフェア(動物福祉)に配慮し、肉類をとらず主に野菜を食べるヴィーガンやベジタリアンの食事も、温室効果ガスの排出抑制につながる点で類似している。しかし、クライマタリアンは、肉類を食べずに野菜を食べることを信条にしているわけではなく、より温室効果ガスの排出が少ない物を食べることを重視する。肉類の温室効果ガス排出量は野菜より多く、肉類でも鶏肉よりは豚肉、豚肉よりは牛肉の方が多いと考えられるが、こうしたことを意識して相対的に環境負荷の小さい食事を心掛けるのである。

また、クライマタリアンの食生活においては、食料の種類だけでなく、輸送にかかる環境負荷の大きさも考慮される。この観点からすれば、遠方から空輸で運ばれた食料よりも地元でとれた食料の方が優れていることになる。食料の重さ×輸送距離で環境負荷の大きさを測る指標に「フードマイレージ」(英food milesが起源)があるが、これと類似した考え方である。輸送時間が短いことで、例えば、野菜・果物へのポストハーベスト農薬(防カビ等の目的で収穫後に散布する農薬)の使用が控えられるのならば、人の健康にとってもプラスであろう。

ベジタリアンと違い、クライマタリアンであれば環境負荷がより小さい肉類を食すること自体には引け目を感じる必要はない。しかも、地元でとれた食料を食べることを通じて環境負荷低減への貢献を実感できる。こうした気軽さから、過去にヴィーガンやベジタリアンを断念した人でも、クライマタリアンであれば挑戦しやすいだろう。

毎年6月は環境月間である。もし、食がもたらす環境問題の改善に少しでも役立ちたいと思うのであれば、この機会に是非、クライマタリアンにチャレンジしてみてはいかがだろうか。

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