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先進国からの制裁を浴びるロシアの通貨ルーブルが大幅上昇

~一旦半値に、その後資本規制により6年10カ月ぶりの高値へ~

2022年05月31日

政策調査部 主任研究員 山崎 政昌

ルーブルが対ドルで急上昇している(下の図を参照)。ロシアが2月24日にウクライナ侵攻を開始してから、ルーブルは急落し、3月7日には1ドル=177ルーブル近辺まで5割を超える下落となった。背景には、欧米主要国の制裁による経済の弱体化や資金流出への懸念があったと考えられる。しかし、その後ルーブル相場は反転し、3月31日にはウクライナ侵攻前の水準を回復した。5月25日に付けた直近の高値は、2015年7月以来の水準まで上昇している。5月26日の終値は、安値からおよそ2倍、ウクライナ侵攻直前の2月23日からは4割弱の急騰を演じた。

しかし、ここもとのルーブルの反発はロシアが課した資本規制によって人為的に起こされたものだ。ロシアからの資本流出を防いだり、あるいはロシアへの資本流入を促したりするためにさまざまな資本規制が導入されたが、そのなかで効果が大きかったと考えられるのが、輸出企業に対する規制である。それは、輸出企業が、輸出代金で得た外貨の80%をルーブルに転換しなければならないというものだ。通常、貿易で使われる決済通貨はドルである。この規制のもとで輸出企業は財を輸出して獲得したドルの80%を売って、ルーブルを買わなければならない。こうしてルーブルに対するいわば人為的な需要が作られて、価格が上昇している。通貨当局は、自身の保有する外貨を使うことなく、為替介入を行ったのに等しい効果を生み出した。

さすがに通貨当局は、現在のルーブルの上昇ペースが急激すぎると考えたのか、上昇ベースを緩やかにするために、資本規制を緩和する方向に舵を切ったようにみえる。ロシア財務省は、前述の輸出企業によるドルからルーブルへの強制転換比率を80%から50%へ低下させることを5月23日に発表した。それでもルーブル高は収まらず、5月25日には前週末比で12%高い1ドル=55ルーブル台の高値まで駆け上がったのである。

輸出企業による規制対応のルーブル買い需要に加えて、足元では輸出企業による法人税納税のためのルーブル買いニーズがルーブル相場を押し上げている模様である。輸出代金を強制的にルーブルに転換する規制はウクライナ侵攻後に導入されたものであるため、規制導入前の輸出代金がドルのまま相当額保有されていたと考えられる。そのドルを売って、ルーブルを買う動きもルーブルを押し上げる要因となっている。

ロシアはソ連崩壊後、経済発展のために資本の自由化を徐々に進めてきた。相当な時間をかけて作り上げてきた国の発展の基盤の一つがわずかな時間で失われつつある。

図 ロシア・ルーブルの対ドル為替レートの推移(左:短期、右:長期)

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