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危ないのは新興国?それとも日本?

2022年01月06日

金融調査部 金融調査部長 児玉 卓

コロナとの戦いを継続しながらも、経済的に見れば2021年は世界的な回復の年となった。IMFなど多くの予測機関は総じて2022年も回復継続を見込んでいる。もっともそれに伴う金融政策の転換が何をもたらすのか、その不確実性に金融市場は身構えているようにみえる。景気拡大に伴って緩和的政策が終わる。それだけなら問題は少ない。しかし、景気回復は世界各国が足並みそろえて進むわけではない。世界経済の牽引役になりつつあるのはやはり米国だ。米国の強さ自体は喜ぶべきことなのだが、同国における景気回復がドル金利を上昇させ、連れてドル高を惹起すれば、回復力で劣後する他国、特に新興国経済には重石となる。

さらに、供給制約が米国を含む世界各所のインフレ率の上乗せ要因になっていることが事態をややこしくしている。当たり前だが供給制約を金融政策で解消させることはできない。例えば、コロナ禍で労働市場から退出した高齢者が金融引き締めゆえに再就職を決めるなどということはありそうにない。しかし、だから中銀がインフレ率の高進を座視できるというものでも必ずしもない。そこにかかわる不確実性、つまり金融引き締めの程度にかかわる不確実性が、金融市場を一段と不安定にするということが起こり得る。それはリスクオフ的症状が生じやすいこととほぼ同義であり、やはり新興国にとっては悩みの種が増えることになりそうだ。2022年は世界経済回復の年でありながらも、国による格差拡大に目を凝らしていく必要のある年となるように思われる。

もっとも、心配なのは新興国だけではない。弱さの性質こそ異なるものの、日本経済の先行きも相当危ういとみるべきではないか。例えば2021年7-9月期にはワクチン接種の進展などもあって欧米諸国(ユーロ圏、英国、米国)の景気回復が継続する中、日本のみ、実質成長率がマイナスとなった(前期比)。これは些細なことだろうか?そうかもしれないが、些細ながらも現在の日本の在りようの象徴とは捉えられないだろうか?

既述のように現在の世界経済の牽引役は米国である。同国は主要先進国の中でもいち早く、コロナ前の経済水準(実質GDP水準)を回復している。それに欧州が続き、主要先進国の中では日本の回復力が明らかに劣後している。実のところ、これは2008年から2009年にかけてみられたリーマン・ショック後の回復パターンの再現である。当時も米国が、そもそもの危機の震源地であったにもかかわらず、他の主要国・地域に先んじてショック前の経済水準を回復し、世界経済を牽引した。そして、「金融危機」という意味では最も被害の小さい国の一つであったはずの日本の回復は、主要先進国中で最も緩慢なものにとどまった。

今はどうか。感染者や死亡者の数からみれば、日本はコロナとの戦いにおける図抜けた優等生といっていいかもしれない。しかし問題は、そうであるにもかかわらず、他国同様に経済が劇的に収縮し、そこからの回復ペースが他国に劣後するという、リーマン・ショック的パターンを繰り返してしまっていることだ。

これはもはや偶然ではあるまい。日本は外部環境の悪化に対する脆弱さ(危機における落ち込みの大きさ)と、後の回復力の弱さ(≒外部環境の変化への対応力の欠如)というダブルの弱点に悩まされ続けてしまっている。それは外貨建て債務が大きいとか、金融政策の自立性が乏しいなどといった新興国の弱さとは性質を異にするし、日本経済の弱点として指摘されることの多い、高齢化とか生産年齢人口の減少、或いは将来不安ゆえの消費抑制などから説明できるものでもない。しかしいずれにせよ、ここにメスを入れない限り、グローバル経済における日本の存在感は薄れるばかりであろう。

二度にわたる「ショック」を奇貨として、日本の弱さの真因の解明と弱点克服の努力が始まることを望みたいといいたいところだが、それが期待できるのでれば、そもそもダブルの弱点など存在しないはず、というべきであろうか?

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児玉 卓

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