2021年12月14日
猫のひなたぼっこが好きだ。香箱座りで目を細めている姿を一目見れば、気の抜けないオンライン会議を乗り切る活力となり、へそ天でゴロゴロする姿を思い出して眠りにつけば、翌朝の目覚めはスッキリ爽やか疲れも抜けている。
先日も下町の路地裏を小一時間ほど散策していたところ、猫たちが集まってひなたぼっこしている場面に幸いにも遭遇できた。邪魔にならないよう距離を取って眺めていると、どの猫も耳の先が少し欠けていることに気づく。喧嘩で負傷したようではなく、V字型に小さくカットされているように見える。可愛い姿を撮り続けてしまう手を休めて検索してみると、耳の形が桜の花びらに似ていることから、「さくらねこ」と呼ばれている猫たちのようだ。
環境省から公表の「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」によると、2019年4月1日から2020年3月31日までの1年間で、53,342匹の猫が行政施設に引取られており、半数以上が殺処分されている。内訳を見ると飼い主からの引取りは2割以下、ほとんどが所有者不明の猫だ。この所有者不明で引取られる猫、ひいては殺処分される猫を減らすことを目的に、自治体や保護団体が中心となって所有者不明の猫を捕獲し(TRAP)、不妊・去勢手術を行って(NEUTER)、地域に戻す(RETURN)、TNRという活動を行っている。耳のカットはその目印というわけだ。
猫は野生動物ではなく、人が自然から切り離して人間社会に組み込んだ、家畜化された動物である。人が責任を持って管理することがあるべき姿であるものの、所有者不明の猫を全て保護することは現実的ではない。外の世界での生活が長く保護に適さない猫もおり、世話や譲渡の見通しが立たない中の保護は、かえって動物福祉に反する結果を招いてしまう。一方さくらねこは、その活動をする人たちの手で給餌が行われるため、食事を探して街を汚すこともない。不妊・去勢手術によって発情期特有の大きな鳴き声による騒音も抑えられ、一代限りの命を全うすることで、糞尿被害も少しずつ減っていく。
TNRは猫との共生に前向きでない人たちにも配慮した、猫1匹取り残さない持続可能な街作りに貢献する活動だ。行政による猫の引取り・処分が減れば、その分のリソースは他の行政サービスの充実となり、回りまわって猫が生きる街に還元されるだろう。ただ猫は繁殖力が強く、1匹の猫が1年で20匹の子猫を生むこともあるという。昨今のネコノミクス下においても、安易な飼育放棄によって行政施設に引取られる猫が増えることがないよう祈りつつ、さくらねこの愛くるしい寝姿を目に焼き付けた。
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マネジメントコンサルティング部
主任コンサルタント 浜島 雄樹
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