追加接種(3回目)はアストラゼネカではなかった。混合接種の副反応は?

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2021年12月09日

英国に住む筆者にも新型コロナワクチンの追加接種(3回目)の順番が回ってきた。英国でも、追加接種は免疫反応を「高める(Boost)」という意味でブースター接種と呼ばれている。

オミクロン株の騒動で、英国政府は全成人に対し2022年1月末までにブースター接種の機会を提供するという目標を掲げ、2回目の接種から3回目までの間隔を当初の6ヵ月から3ヵ月に短縮した。このため、筆者は2回目から5ヵ月目でブースター接種を行うこととなった。また英国ではブースター接種には、ファイザー社かモデルナ社のワクチンが優先的に利用されている。そのため、1、2回目はアストラゼネカワクチンを接種された筆者も、3回目はファイザーワクチンによる混合接種となった。

接種会場に到着すると「アストラゼネカワクチンは打てないのか?」と、受付で問い合わせしている人が多かったことには驚いた。1,2回目のアストラゼネカワクチン接種者が多い英国の30代以上は、混合接種に不安を覚えている人が少なくないようだ。ただ、そのような不安もものともせず、相変わらず手慣れた感じのボランティアにより、アッという間に接種が終わった。翌日は腕が少し痛い程度で、軽い倦怠感は出たものの指示された鎮痛剤を飲めば、仕事や運動にも全く支障はなかった。

オミクロン株の出現を受け、行動制限措置の再導入に消極的であったジョンソン政権は対応を急遽変更し、11月30日から公共交通機関および店舗でのマスク着用が義務付けられるようになった。さらに、オミクロン株感染者との接触があった場合には10日間の自主隔離などの行動制限措置も導入された。しかし、与党保守党議員の多くは、市民の自由を制限することには非常に否定的である(レストランやコンサート、劇場などはマスク着用対象外となった)。このままいけば、自主隔離者が急増し、サプライチェーンの混乱を拡大し、人手不足を悪化させるだけだと、警鐘を鳴らしている。

英国では既に配達ドライバーなどの人手不足による影響は顕在化しており、そのため郵便物の誤配も頻発しているのが実情である。筆者がクリスマスプレゼント用に購入した荷物も、漏れなく近所に誤配されていた。ただ届け先を実家とする方が、わざわざ筆者の勤務先住所から連絡先を調べ、誤配を電話で知らせてくれた(後日、この方は同業者であることが判明。何でもすぐに調査してしまう職業病は国籍を問わないようだ)。彼曰く「私の実家には92歳の母が1人で住んでいるが、電話番号を伝えるので、予定をあわせて取りに行って来てくれないか」とのことであった。

早速電話を掛けたところ開口一番「何よ(What)、あんた誰よ」と、なかなかの迫力の声が聞こえた。事情を伝えると、「大変失礼致しました…」と、しおらしくなったが気丈な様子がうかがえた。「ブースター接種も終了しているので、明日は午後から友達とランチに行くのでその前に取り来てほしい。それがダメなら、明後日から教会のボランティアで忙しいから」と大変お元気なご様子である。翌日、御礼に簡単なクリスマスプレゼントを持って出向くと、若々しくとても90代には見えない英国淑女が現れた。曰く、「95歳の女王陛下が毎日外で頑張っているのに、私もコロナに負けていられないから、毎日外出しているの」とのこと。英国政府のみならず、国民もコロナにくじけず、何とか普通の生活を取り戻そうとする気持ちが感じられる出来事であった。

オミクロン株の国内感染事例が確認された日本でも、遂に追加接種が開始された。また年内にも混合接種の議論が進み、ワクチン供給量を考慮して1、2回目とは違うワクチンが接種される機会も出てくるだろう。日本でも筆者のようにアストラゼネカワクチンを1,2回目に接種された人が3回目にファイザーワクチンを混合接種されることや、(3回目の)接種間隔が短縮される可能性もある。ただその際にも、過度に心配する必要はない。ぜひ思い切って接種に踏み切ってほしいものである。

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菅野 泰夫
執筆者紹介

金融調査部

主席研究員 菅野 泰夫