スポーツの祭典は2022年も日本で開催

~ワールドマスターズゲームズへの期待~

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2021年10月11日

  • 鈴木 雄大郎

1年越しの開催となった東京オリンピック・パラリンピック競技大会(オリ・パラ)が閉幕して1ヶ月余りが経過した。ほぼ無観客での開催など、異例ずくめの大会となったが、各種競技の視聴率の高さが示すように、多くの国民がテレビを通じて声援を送り、開幕直前に懸念されていた大会への無関心さは払拭される結果となった。

国内での大規模なスポーツイベントは2019年のラグビーワールドカップに続き、今回のオリ・パラで一段落したかと思うとそうではない。実は2022年も大規模なスポーツイベントの開催が予定されている。

それは2022年5月13日から29日にかけて開催される「ワールドマスターズゲームズ2021関西」である。ワールドマスターズゲームズとは、1985年から原則としてオリ・パラの翌年に開催され、概ね30歳以上のスポーツ愛好者であれば誰もが参加できる生涯スポーツの国際総合競技大会である。第10回大会となる今回はアジアで初めて開催となり、関西を中心に2府8県で実施される。オークランドで開催された前回大会は約100ヶ国から2.9万人が競技に参加した。関西大会でも国外から2万人、国内から3万人と過去最大規模の参加人数を目標に掲げている。

ワールドマスターズゲームズは、スポーツツーリズムの新興の一手としても期待されている。スポーツツーリズムとは「スポーツを『観る(観戦)』『する(楽しむ)』ための移動だけではなく、周辺の観光要素や、スポーツを『支える』人々との交流や地域連携も付加した旅行スタイル(※1)」であり、今回も関西各地でスポーツを楽しみながら、周辺地域の観光需要の掘り起こしにつなげる狙いがある。2019年の訪日外国人消費動向調査(観光庁)によれば、日本への主な来訪目的が「スポーツ・スポーツ観戦」だった人の割合は全体の0.9%にすぎず、スポーツツーリズムは拡大の余地を秘めている。筆者は以前、キューバに野球観戦へ行き、ニカラグアで現地の少年らと草野球をするなど、スポーツツーリズムを経験したことがある。同じスポーツでも国や文化が異なると新鮮に映る。

来年の関西大会に向けて、各自治体は和菓子づくりと茶道の体験などコト消費の観光プランを策定し、電車が乗り放題となる限定の交通パスを用意するなど、訪れた人が観光しやすい環境を整えている。2019年における2府8県の外国人宿泊者数を見ると、京都、大阪、兵庫の3府県で9割を占めた。大会を契機にこの3府県以外の魅力が世界に発信されれば、インバウンド需要の裾野の拡大も期待できよう。

もちろん、大会の成功にはコロナ対策が鍵を握ることはいうまでもない。関西大会は開催地域が広範であること、また競技参加者の人数もオリ・パラを上回るため、多くの国際大会で実施されている「バブル方式」を採用することが難しい。加えて現在は来日後に10~14日間の隔離が求められているが、アマチュアの選手の場合、滞在期間に加えてこの隔離はハードルが高いように思う。空港検疫に加え、ワクチン接種証明の活用、感染症対策の徹底、滞在先での定期的なPCR検査などを実施することで隔離を免除できる仕組みの構築が求められる。こうした取り組みは、インバウンドの受け入れ再開と感染症対策の両立に向けた試金石ともなろう。

(※1)出所:観光庁 第3回スポーツ・ツーリズム推進連絡会議(2010年7月28日)資料7参考資料「スポーツツーリズムの推進について(中間報告)の概要」

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