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経済回復の陰に高インフレ懸念が消えないロシア

2021年09月30日

シニアエコノミスト 菅野 沙織

ロシア経済は速いペースで回復しており、国際通貨基金(IMF)が今年7月末に21年のロシアのGDP成長率予想を3.8%から4.4%に上方修正したほか、ロシア中銀も21年のGDP成長率は4.0%~4.5%になると見通している。世界的な需要回復に伴い原油価格が上昇していることもロシアにとって追い風となっている。

21年第2四半期のロシアのGDP成長率は前年比10.5%となり、経済回復ペースが加速していることを示唆している。GDP成長率がプラスとなったのは20年第1四半期(同1.4%)、つまり新型コロナウイルスのパンデミック発生以降初めてであるほか、二桁の高成長は2000年第3四半期以来、約21年ぶりである。

20年第2四半期のGDP成長率が前年比7.8%のマイナスとなっていたため、21年第2四半期の二桁成長はベース効果によるものではあるが、成長の幅は、ロシア経済がパンデミック前の水準まで回復したばかりでなく、その水準をすでに上回っていることを示している。

しかしこの二桁成長の陰で高インフレが忍び寄っていることが懸念されている。
実際、インフレ上昇に歯止めがかかっておらず、8月のインフレ率は前年比6.7%(前月比0.2%pt上昇)となったほか、コア・インフレ率は同7.1%(前月比0.6%pt上昇)と、16年7月以来、5年ぶりの高水準に達している。ロシアの世論調査会社レバダの調査結果によれば、21年7月には回答者の37%(20年3月には同20%)が日常品や日常サービスの価格が一年間で大幅に上昇したと答えている。2015年には同様の回答の割合は60%であったが、その後徐々に低下していた。しかし、今年は高インフレを懸念する回答者の割合が前年と比べて上昇しており、インフレ上昇の懸念が強まっていることを示唆している。

さらに高インフレ懸念の「火」に油を注いだのは、先日(9月19日)、議会選挙に向けて、政権が社会福祉向上を目的に財政を拡大したことである。合計6,000億ルーブル(1兆円弱)を年金生活者や教師、医療従事者などに一時金の形で支給した。このような「選挙用のばらまき資金」が一時的に経済回復ペースを押し上げているものの、インフレにも影響を与えかねないため、さらなるインフレ再熱が懸念されており、現在の経済回復ペースが維持できない可能性があることも否定できない。

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