「昆虫食」が日常となる日は来るのか?

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2021年09月29日

  • 経済調査部 市川 拓也

昨今、昆虫食がはやっているらしい。無印良品で販売された「コオロギせんべい」が注目を浴びたが、他にも「コオロギチップス」(味源)や「こおろぎカレー マッサマン風」(虫の恵み社)といった様々な「コオロギ」食品が世の中に出回っている。もちろん、現在、販売されている昆虫を使った食品はコオロギだけではなく、蚕のさなぎや蜂の子など、多様な昆虫食が購入できる。日本能率協会総合研究所は世界の昆虫食市場規模は2019年度の70億円から、2025年度には1,000億円規模に達するとの予測を公表(※1)しており、今後、ビジネスとして大きく成長する可能性がある。

コオロギなどの昆虫を食べることの意義の一つには、食糧危機への備えがあるという。これまでのように世界の人口が増え続ければ、いずれ人々に必要な栄養分が足りなくなり、その時に昆虫からタンパク質を摂取できれば、危機を乗り越える手段の一つになるという考え方である。また、昆虫は牛などと違い、少ない餌で育つことから効率よくタンパク質を抽出することができ、結果、地球環境の保護につながるとの考え方もある。昆虫食が注目されるようになったのは、FAO(国際連合食糧農業機関)から報告書“Edible insects: future prospects for food and feed security”が2013年に出されて以降のようである。

我々日本人は昔からイナゴや蜂の子の佃煮などを食べる習慣があり、昆虫を食べてこなかったわけではない。今でも虫食が受け継がれている地もあるが、おそらく栄養不足を補うためではなく、嗜好品として食べられているのであり、食糧危機への備えや環境保護を意識して食べているわけではなかろう。

しかし、食糧危機への備えや環境保護のため、今だからこそ昆虫食に注目する価値があるとすれば、少しでも多くの国や地域で受け入れられるようにならなければ意味がない。この点で、前述の「コオロギせんべい」にみられるように、虫の姿のままではなく、パウダーとして原材料に入れる試みは、裾野を広げる上で効果的な方法と考えられる。こうした方法であれば、躊躇なく自然な形で昆虫を摂取できるかもしれない。

近い将来、日常生活において何気なく食品パッケージを裏返すと、原材料名の欄に、コオロギやトノサマバッタ、アブラゼミなどの文字が見られる日が来るのであろうか。

(※1)日本能率協会総合研究所(PR TIMES)「世界の昆虫食市場2025年に1,000億円規模に MDB Digital Search 有望市場予測レポートシリーズにて調査」(2020年12月21日)

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