再エネ導入拡大により国民負担はさらに増加するが増加幅は低下へ。2030年代初頭からは減少の見通し

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2021年08月31日

2021年6月に「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(以下、グリーン成長戦略)」が公表された。2020年12月公表のグリーン成長戦略のアップデート版である。注目されたのは、2050年の脱炭素に向けた短期的な目標年となる2030年度までにどのように電力部門の脱炭素化への対策を打つのかが具体的に記載されたことだ。2020年12月のグリーン成長戦略には洋上風力発電や次世代型太陽光発電などが有望な再生可能エネルギー(以下、再エネ)として記載されているが、これらが普及するのは2030年代と考えられる。そのため、2030年度までの脱炭素化に向けた電源の普及策が必要とされていた。

2030年度まで10年を切っている。そうなると比較的導入までの時間が短く発電コストの低い太陽光発電が再エネのなかでも重視されることになる。今回のグリーン成長戦略では、既存技術を用いた太陽光発電の普及策がいくつか書き込まれている。例えば、自治体の取組みと荒廃農地の活用を促進する政策である。自治体は再エネ促進区域を設定し、案件開発の加速を目指す。再エネの適地かどうかの判断は、周辺環境への影響まで含めて、地域住民にまかせることは理にかなっていよう。また、農業を営むことが期待できない荒廃農地への再エネの導入拡大についても触れられている。2030年度の温室効果ガスを2013年度比46%削減するとの政府目標実現に向けて、これらの政策を着実に実行していくことが求められる。

ところで、再エネは発電コストが高いという印象をお持ちの方も多いだろう。実際に再エネ導入に伴う負担は増加し続けてきた。大和総研の試算(※1)では、2012年度に導入された再エネ賦課金は2019年度には一世帯当たり1,047円/月である。再エネ拡大で今後もしばらく負担は増していくが賦課金の伸びは低下していくと予想される。2012年度のFIT制度開始から2019年度までの年平均増加額は131円/月だったが、2020~30年度は年平均39円/月となる。2030年代初頭にはFIT制度開始当初の高額での買い取りが終わる電源が増加することや、再エネの固定買取単価が一段と低下すると予想されることから、賦課金の負担は減少していく見通しである。ここから概ね10年間の再エネ賦課金による国民負担の抑制が重要になると考えられる。

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山崎 政昌
執筆者紹介

政策調査部

主任研究員 山崎 政昌