ライブ配信は楽しいが、やっぱりライブが好き
2021年08月12日
ライブが好きである。音楽の演奏会はそれほどでもないが、芝居やミュージカルなどを観劇するために、新型コロナウイルス感染症が蔓延する以前にはかなりの頻度で劇場に足を運んでいた。それが昨年2月末以降は、舞台公演もコンサートも次々と休演を余儀なくされた。どのような場合に感染リスクが高いのか判断する手掛かりがほぼゼロの中で、人と人とが接触する機会は極力避ける判断となったのは致し方なかったが、それ以前との大きな断絶を実感した。
1回目の緊急事態宣言が解除されて以降、舞台公演やコンサートは徐々に再開されたが、感染拡大を防ぎつつ、どう再開するか手探りの対応が続いた。その一環で急速に増えたのがライブ配信である。舞台公演やコンサートを生中継し、それをパソコンやスマホで視聴する方法である。録画した映像をあとから配信するアーカイブ配信などもある。コロナ禍以前から、人気が高くチケットの入手が困難な舞台公演やコンサートなどをライブ配信するサービスはあったが、感染防止策として新たなニーズが生まれた。当初は無観客の舞台公演やコンサートをライブ配信することが多かったが、有観客となったあともライブ配信やアーカイブ配信が増えている。これは、販売可能な座席数の制限やコロナ感染への警戒などから、ライブの公演に足を運ぶ人が減った中で、ライブ配信などが公演主催者の収入を補填する手段になっているためと見受けられる。
ライブ配信の良いところは、わざわざ劇場に行かずとも自宅など好きな場所で舞台公演やコンサートを楽しめることである。自宅であればマスクなしで、自由に飲食しながら観劇することも可能で、休憩時間にトイレの長い列に並ぶ必要もない。また、ライブ配信の映像はカメラアングルによっては最前列の席よりもさらに舞台の近くで観劇することができる。役者さんの細かい表情まで見える上、前の席の人の頭で舞台が見えないなどということもあり得ない。このようにさまざまなストレスから解放される上に、ライブ配信のチケット代はライブよりも割安に設定されている。
ライブ配信のメリットは多く、個人的にも、外出がままならなかった昨年に続き、今年に入ってからもライブ配信サービスを時々利用している。とはいえ、ライブ配信にはライブにかなわない点がある。一言で言えば臨場感ということになるのだろう。劇場という空間を共有することで感じる音楽やせりふの音の波動は、画面越しには伝わってこない。また、舞台中継のカメラアングルはせりふをしゃべる人に近づく余り、舞台上の他の登場人物の動きは見えなくなる傾向がある。劇場にいれば、自分が見たいところを見ることができる。そもそも劇場に足を運び、その舞台公演やコンサートなどを楽しむ以外の選択肢を制限することで、観劇者も全身で芝居や演奏を受け止めようとする姿勢に自然となることができる点が、ライブとライブ配信の大きな違いといえるだろう。ライブ配信の普及は楽しみの選択肢が増えたこととして歓迎しているが、一方でライブの芝居や演奏を何の気兼ねもなく、全身で楽しめる「日常」が早く戻ってほしいと考えている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
中国:26年1Qは予想外の堅調で5%成長
ただし、中東情勢緊迫長期化なら政府目標4.5%~5%成長は困難に
2026年04月17日
-
原油高の国内への波及経路と価格転嫁率を踏まえた消費者物価への影響
原油・天然ガス・石炭価格の10%上昇は物価を最大約0.3%押し上げ
2026年04月17日
-
令和8年金商法等改正法案 有価証券に関する不公正取引規制等の見直し
市場制度ワーキング・グループの提言がそのまま反映される
2026年04月17日
-
熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 何故、円安・ドル高が止まらないのか?
中東情勢の混乱が続く中、円安と物価高・実質賃金低下の悪循環が継続するリスク
2026年04月16日
-
ホルムズ海峡封鎖で変わる世界地図—改めて問われる「成長投資」とは?
2026年04月17日

