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米中貿易摩擦「2回戦」の行方

2021年08月10日

経済調査部 エコノミスト 岸川 和馬

2021年7月末、バイデン米大統領は演説で「バイ・アメリカン」(政府調達において米国製品を優先する政策)の強化を表明し、経済大国としての役割を取り戻すと訴えた。念頭には中国の存在があろう。トランプ前政権下で激化した米中貿易摩擦では2020年1月に「第1段階」と呼ばれる貿易協定を締結したものの、その直後に新型コロナウイルス感染症のパンデミックが発生して水入りとなった。ワクチン接種が各国で進展する中、ポストコロナの米中貿易摩擦「2回戦」はどうなるのだろうか。

米中関係を貿易の観点から整理すると(以下、貿易統計の出所は米国が商務省、中国が中国税関総署)、2020年の中国の輸入総額のうち米国が占める割合は約7%だった。これに対して米国の輸入総額に占める中国の比率は約20%である。半導体などの安全保障上の焦点である電子部品などの電気機器分野に限れば、対中輸入比率は33%に上る。2018年時点で40%だった同比率は米中貿易摩擦「1回戦」で大きく低下したが、米国は依然として中国からの供給に頼っている格好だ。

今後、米国が電気機器分野の対中輸入比率を一段と引き下げるには、①国内での増産、②他国からの代替輸入、の2つの手段が考えられる。ここで国連や国際貿易センターの統計データから顕示貿易統合比較優位指数(RTA)を算出すると、米国は電気機器において比較劣位を持ち、貿易開放度が低いという結果が得られた。すなわち米国の電気機器分野では、関税の引き下げなどによって②を推進することが経済合理性の観点からは望ましいといえる。

しかし「バイ・アメリカン」を掲げるバイデン政権は、輸入よりコストがかかることになっても、国内製造業の保護や安全保障の観点から①を重視するだろう。とはいえ、比較劣位の分野で中国からの輸入分を国内生産で代替するには生産体制の再構築が必要であり、相応の時間がかかるはずだ。また国内生産に伴うコスト増は最終財価格の上昇という形で家計に転嫁される可能性がある。このため、代替輸入を促進しつつ、企業の設備投資を助成するなどして国内の生産体制の強化を急ぐという①と②のハイブリッド型の戦略が想定される。

トランプ前政権時代と比べると、半導体不足やコロナ禍に対応するためのデジタル化の推進によって電気機器分野の重要性は急激に高まった。この分野は相対的に米国が不得手とすることから、貿易構造から見た米中摩擦は前回に比べて中国優位で再開する可能性が高い。米中貿易摩擦「2回戦」では、交渉に影響を与えるとみられる米国の生産体制の動きについても注目したい。

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