「学校に行きたくない」— 新型コロナに奪われた楽しい学校生活

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2021年07月07日

  • 矢澤 朋子

筆者の子どもが通う小学校は新型コロナウイルス感染防止のため昨年度から集団登校を中止しており、時折子どもを学校まで送っていくことがある。今年度に入ってから校門前で登校を渋る子どもの姿が増えていることに気付いた。国立成育医療研究センターが21年2~3月に行った調査によると、小学1~3年の43%、小学4~6年の41%が新型コロナ感染症によって「学校に行きたい」という気持ちが「減った」と回答した(以下図表)。また同センターは、①20年4~5月、②6~7月、③9~10月、④21年2~3月の4回にわたり精神的健康に関するアンケートを実施した。それによると小学生の精神的健康は①から③にかけて多少改善したが、④では再び悪化している(※1)。

新型コロナによる気持ちの変化

昨年は多くの学校で休校措置が取られ、その後の学校生活には新型コロナ感染防止のため様々な制限が課された。制限は徐々に緩和されているものの、移動や宿泊を伴う行事、学年をまたいだ活動や交流、合唱や管楽器演奏、調理実習、グループワークなど、現在でも制限されている活動は多い(※2)。そもそも子ども同士の会話や遊びもコロナ禍以前のように自由ではないため、新しい友人を作ることすら難しそうである。筆者が「隣の席の子の名前は?」と子どもに尋ねたところ、「知らない。お話ししちゃいけないから、話したことない。」との答えが返ってきた。学校の教職員の方々による感染対策のおかげで子どもたちは学校生活を送ることができているものの、制限が多いため注意される回数が増えることもあるだろう。子どもたちは「学校に行くこと」の楽しさを実感しづらくなっているようだ。

新型コロナワクチンの接種は加速しているものの、現時点では自由に人と交流することはまだ難しい。大人であっても終わりが見えない中で頑張り続けることはつらく、そのコロナ疲れのためか新型コロナ感染拡大防止に反する行動をする者も見られる。せめて、家族や友人など大事な人と楽しく過ごせる日がいつになるのか見通しがつけば、感染対策に前向きに取り組めよう。これは子どもたちとっても同様である。我々大人は我慢を強いられている子どもたちの心情を受け止め、寄り添うこと、そして子どもたちに説明できない(新型コロナ感染拡大防止に反する)行動を慎むことが求められている。また、ワクチン接種が迅速に進むよう関係者は一丸となって尽力する必要があろう。

本日(7月7日)は、機織りの名手・織姫と働き者の牛使い・彦星が再会できる日。織姫と彦星も、七夕の夜に会えるとわかっているから一年間仕事に励めるのである。その褒美として、今夜、せめて織姫と彦星には天の川での逢瀬を楽しんでもらいたい。コロナ禍とはいえ、リモート逢瀬でないことを願う。

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