ふるさと納税で地域のファンをつくろう
2021年06月14日
コロナ禍で地方への関心が高まっている。密となる大都市を避けるほか、テレワークが普及していることがその背景にあるという。
ただし、東京からの転出を受け入れている地域の多くは近隣の県だ。東京から離れた地域が移住者を受け入れるには、地域の魅力を伝える地方の努力が必要と思われる。また、いきなり移住するというのはハードルが高い人も少なからずいると考えられる。そうした人々に対し、まずは地域のことをよく知ってもらい、ファンになってもらうことが必要だろう。
こうした考えは、「関係人口」という概念と親和性が高い。総務省(※1)によると、関係人口とは、「移住した『定住人口』でもなく、観光に来た『交流人口』でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のこと」をいう。つまり、実際にその地域に住んでいるわけではないが、単に観光をしに来ただけの人よりもその地域に愛着を持ち、関わりを持つ人のことを指す。
関係人口を増やすことは、前述のように、移住につながることが期待される以外の効果も期待できる。それは、移住を直接の目的としないことで、日本全体で総人口が減少する中、人口の取り合いに終始するのではなく、複数の地域で人口を共有してしまおうとする一種のシェアリングエコノミーのような効果である。また、近年、居住地域に対する価値観は多様化しており、コロナ禍でテレワークが進む中、地方と都市部に2つの生活拠点を持って暮らす「二地域居住」という考えも出てきている。
①地方に定住を考えている人、②都市部には住むが地方へも関心がある人、③都市部と地方の2つの生活拠点を持ちたい人、など様々な人に対して、地域づくりの担い手を創出するという観点から、関係人口という概念は有効なアプローチとなり得るのではないかと考えられる。
そして、こうした関係人口を増やすために、ふるさと納税が使えないだろうか。ふるさと納税は、現状モノ(返礼品)目当ての寄付も少なからずあるだろうが、農業体験や移住体験といった体験型などのコト消費を活用することで、地域のファンを増やし、関係人口を増やせないだろうか。既にふるさと納税の体験型プログラムはあるが、先行研究(※2)によると、体験型プログラムを実施する事業者と寄付者では継続的な関係が構築されているが、自治体と事業者、自治体と寄付者の間に継続的な関係を構築するには至っていないようである。事業者と寄付者との間の継続的な関係はもちろん、自治体が事業者とも協力して寄付者に地域の魅力を発信するなど寄付者の再訪を促すことで、寄付者と地域の持続的な関係を築き、関係人口を構築していくことが重要ではないかと思う。これまで、ふるさと納税については返礼品目当ての寄付になってしまっているといった批判も多いが、こうした関係人口を構築していく活用法であれば、応援したい地域の力になれるというふるさと納税の意義により合致するのではないか。
(※2)芦澤侑哉・川原晋・野田満「体験型ふるさと納税返礼品の活用によるステイクホルダー間の継続的関係構築 –自治体・事業者・寄付者の意向に着目して-」(首都大学東京編『観光科学研究』第13号、2020年3月、pp.23-32)
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