新型コロナウイルスの支配から解放される日に向かうロシア

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2021年05月20日

  • シニアエコノミスト 菅野 沙織

新型コロナウイルス感染症のパンデミック発生から一年余りが経過したが、その間の世界各国の政府の対応は多種多様であった。例えば、英国はパンデミック発生当初の対応が遅れたものの、その後は猛スピードで実施したワクチンの集団接種で状況を好転させることができた。その一方、新型コロナウイルスの変異株の流行に苦しむインドは危機的な状況にある。

ロシアに目を向けると、5月7日現在の一日の感染者数は8,386人、死亡者数は376人となっている。新型コロナウイルスの発生以降、累計で480万人が感染、そのうち11万人が亡くなっており、コロナに打ち勝つ日はまだ遠いとの印象がある。また、ロシアではワクチン接種が進んでいるとはいえ、一早くワクチン開発に成功した国にしてはそのスピードは他国と比べて遅い。実際、ロシアでは今月初めの時点では1,300万人が一回目の接種を受け、二回目の接種も終えた人口は900万人であるのに対して、例えば英国では既に3,500万人が一回目の接種を、1,700万人が二回目の接種を済ませており、ロシアのワクチン接種の遅れを際立たせている。

感染者数や死亡者数が高止まりしている中、ロシア政府はより速いペースでのワクチン接種の普及を呼び掛けると同時に、通勤目的の移動を制限しているほか、感染のさらなる拡大に歯止めをかけるため、今年5月1日のメーデーから第二次世界大戦戦勝記念日の9日までを大型連休とした。新型コロナウイルスとの闘いは長期戦になりそうだが、ロシア人の心境は一年前と比べて少し明るくなった様子ではある。

ロシアの世論調査会社ロミルが昨年4月と今年4月に実施した調査の結果からは、「新型コロナウイルスとともに」生きた一年間の生活の中で、ロシア人の活動や消費パターンは変化したものの、「新常態」に対する不安は減っていると言える。

例えば、外食について、一年前には調査対象者の25%が不安であると答えたが、今回は不安に感じるとの回答の割合が11%まで低下した。家の近所のスーパーでの買い物については、昨年の今頃には20%が不安を感じると回答していたが、今年4月にはその割合は8%まで低下した。また、ロシア国内の経済状況については、楽観しているとの回答が増えている。更に、昨年4月時点では、向こう12カ月間に経済状況が悪化すると思うとの回答は64%であったのに対して、今回はその割合は34%まで低下している。生活習慣の一部も徐々にではあるがパンデミック前の水準に戻る方向に向かっている。上記の調査によれば、昨年4月の時点では外食を完全にやめたとの回答は全体の37%であったが、今年4月の調査ではわずか2%であった。

そういえば、モスクワ在住の友人夫婦は、先日二回目のSputnik Vワクチンの接種を受けたことにより、今では週に2、3回、外食を楽しむようになったと嬉しそうに話していた。

まだ世界各国の足並みは揃ってはいないものの、少しずつ、新型コロナウイルスの支配から解放された世界が見え始めた気がしている。

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