新春を迎えて

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2021年01月01日

  • 理事長 中曽 宏

コロナ禍は、図らずも日本が直面している課題をはっきりと示した。ポストコロナの経済社会への移行に向けて、日本は複数の大きな課題を同時に達成するという離れ業を成し遂げなくてはならない。まず、各国に後れを取っていることが露呈したデジタル化を加速しなければならない。同時に、政府が掲げた2050年カーボン・ニュートラルを目指して、気候変動対策では他国に先んじなくてはならない。そして、サプライチェーンの再構築も急ぐ必要がある。

これらの課題を達成するためには、革新的な技術とそれを体化した膨大な設備投資とが必要になる。それ自体が需要増につながるだけでなく、生産性の向上や技術革新を通じて日本経済の成長力そのものを引き上げる大きな推進力となりうる。膨大な設備投資需要を満たすためには、日本各地の設備投資を計画するあらゆる企業に資金を循環させることができる高度化された金融仲介機能も必要となる。新型コロナウイルスの感染拡大は災禍であったが、新たな経済社会を構築する契機として捉えることで未来への途が拓けるだろう。

経済の潜在成長率が上昇すれば好循環も作動する。すなわち、企業の成長期待が上向いて設備投資に弾みがつく。それは需給ギャップを改善させるので物価上昇率も次第に高まっていくだろう。財政構造の持続性も回復するので財政支出を、社会の持続性に貢献する分野に振り向けることができるだろう。例えば、デジタル化で職を失った人々が新しい技術を身に付けることができるよう、無償で大学や専門学校で教育をして再び労働市場に送り出す仕組み(リカレント教育)などが考えられる。

各国とも目先の最優先課題は、新型コロナウイルスの感染拡大防止だが、そうした中でもポストコロナの経済社会構築に向けた国際的な大競争は既に始まっている。その先鞭をつけているのは、経済のグリーン化を通じた復興を意味する「グリーン・リカバリー」と「デジタル化」とを掲げているEUだ。バイデン新大統領のもとで米国も競争にほどなく加わる。2021年は、国際的大競争の本格的な幕開けの年となるだろう。

大競争からの脱落は日本経済の埋没を意味する。新型コロナウイルスは、日本にとっての積年の課題の克服にもはや一刻の猶予もないことを悟らせる目覚まし時計(wake up call)となったのではないか。覚醒した日本にとって今年は課題達成に向けた大切な一年となるだろう。日本には未来を拓く人の英知と技術があると確信している。1964年の五輪は先進国として蘇った日本の姿を世界に見せた。今年の五輪は課題の克服に向けてスタートダッシュを切った日本の意気軒昂を世界に示す大会となることを切に願っている。

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