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配慮と遠慮の波間で

2020年10月21日

経営コンサルティング第二部 主席コンサルタント 林 正浩

「配慮はしますが、遠慮はしません」このキャッチコピーを覚えている方がいらっしゃったら相当な広告通である。2016年3月22日の日本経済新聞全15段カラーの新聞広告。意志の強そうな瞳が印象的な女性の顔のアップと上記のコピーが目を引くクリエイティブで、東京の地下鉄駅構内でもポスター広告を目にしたことを記憶している。あれからもう4年あまりが経つが、改めて素晴らしいコピーだと思う。

コンサルタントにとって、プロジェクト関係者への「配慮」は業務の円滑な遂行には不可欠である一方、腰の引けた「遠慮」によって提言が丸くなっては顧客価値向上にはつながらない。また、行き過ぎた配慮は忖度(そんたく)を生み、一方遠慮が過ぎると無関心になり下がる。

職業としてのコンサルティングは、この配慮と遠慮の波間を渡し舟で行き来しながら独自の価値を創りこんでいく、非常にストレスフル&スリリングな生業(なりわい)なのである。

配慮は「慮(思い)」を相手に配ることを、一方遠慮は「慮(思い)」を自分から遠ざけることを意味する。サービス業の担い手としての心配りと専門家としての極言・直言のバランスをいかに取るか。悩み続けるうち、プロジェクトはギリギリの及第点(たまに落第点)で着地。モヤモヤ感の中で悩みは繰り越されていく。

「配慮最大、遠慮最小でいいんじゃないの」アラ還の先輩コンサルが悩み多きシニアコンサルに声をかけてくれた。もちろん稲盛和夫氏の掲げるフィロソフィ「売上を最大に、経費を最小に」からの連想だろう。

なるほど「配慮最大、遠慮最小」を心掛けてみるとクライアントからの声も少し変わってくる。「そんなこと!までやってくれるのですか」がその声だ。

最大の配慮も最小の遠慮もクライアント側から眺めると「そんなこと」なのである。感嘆符がついた「そんなこと」がどんなことかは紙面の都合上割愛するが、渡し舟をただ漕ぐのではなく、漕ぎながらせっせと「そんなこと」を内職で紡ぎ続けることが私たちコンサルタントの使命なのだろう。

「そんなこと!」の積みあげがクライアントを虜(とりこ)にする。この心意気を大切にしたいものである。

ところで、件の広告主、実はご同業のアビームコンサルティングである。コンサルティングファームが自社の姿勢を打ち出すことは珍しくないが、この「配慮はしますが、遠慮はしません」はストレートなだけに多くの人の心を打つ。傑作だ。改めて同社に拍手を送りたい。

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林 正浩

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経営コンサルティング第二部
主席コンサルタント 林 正浩