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オーバーバンキングとは何か

2020年10月05日

金融調査部 研究員 坂口 純也

このところ、地銀再編の議論がメディアを賑わせている。関連法制の整備、提携や統合、異業種プレイヤーの参入など以前より話題に事欠かず、内閣の交代を機に改めて脚光を浴びている格好だ。

地銀再編の議論でよく用いられる主張として、「日本はオーバーバンキングだ」というものがある。銀行が多いから再編して減らすべきというわけである。

しかし、よくよく考えてみると「オーバーバンキング」とは何を指しているのだろうか。銀行の数が多いことを指しているのだろうか、銀行による貸出額が多いことだろうか、それとも店舗が多いことだろうか。さらにいうと、「多い」というのは何を基準にしてのことなのだろうか。頻繁に引き合いに出される割に、なかなか判然としない概念である。

2019年11月に欧州中央銀行(ECB)が公開したペーパー(※1)は、こうした「オーバーバンキングとは何か」という問題意識に真正面から答えようとしている。曰く、オーバーバンキングという概念は大まかに三つの柱に整理できるという。すなわち、①銀行セクターの規模、②銀行の競争環境、③銀行のインフラ・効率性、である。より具体的に言い換えると、オーバーバンキングとは、①経済規模に対して銀行セクターの規模が大きいこと、②銀行間の競争が激しいこと、③銀行の店舗や従業員が多いことなどであるという。

こうした整理に基づいて、同ペーパーは、2006年から2017年にかけての主要先進国26ヵ国についてオーバーバンキング度合いを測る指数(高いほどオーバーバンキング)を算出し、その高低を比較している。その結果、最もオーバーバンキングとされたのはドイツで、そのあとに日本、オーストリア、フランス、イタリアと続く。

なるほどたしかに日本はオーバーバンキングであると言えそうだ。日本の指数の内訳を見ると、銀行の財務レバレッジの高さ(上述①を構成する変数)、利鞘の薄さ(同②)、人口あたり店舗数の多さ(同③)が特に他国に比べて顕著であると評価されている。

とはいえ、オーバーバンキングであることは問題なのだろうか。短期的に見れば、借手にとってオーバーバンキングは悪い話ではない。例えば、店舗が多ければ窓口に相談に赴くコストが低くて済むし、銀行が金利の引下げ競争を行えば借手は低い金利で借り入れできる。

しかし、中長期的に見ると、オーバーバンキングが内包するリスクは小さくない。例えばオーバーバンキングによって銀行の預貸ビジネスの収益性が低下すれば、有価証券運用などにおける過度なリスクテイクを誘発し金融システムの脆弱性を高める可能性がある。また、銀行間の競争が激化して金利の高低を過度に重視した貸出・借入が行われるようになれば、銀行と企業のリレーションが希薄化し、経営の規律付けや経営危機時の支援が行われにくくなる懸念もある。

オーバーバンキングの解消に対して、経営統合や合併による再編は有力な手段といえるだろう。とはいえ、再編が全てではない。銀行の数が変わらずとも、経営の効率化が進めばオーバーバンキングの解消には資する。例えば、上述のオーバーバンキング指数が最も低い国は、デジタル技術の活用に一日の長があるエストニアである。国がデジタル技術の活用を進めやすいよう環境整備を行うのも重要であろう。再編のニュースはドラスティックな分、耳目を集めがちだが、銀行が個別に進めるデジタル技術の活用や店舗網の再編などの効率化施策にも注目したい。

(※1)Gardó, Sándor and Klaus, Benjamin (2019) "Overcapacities in banking: measurements, trends and determinants", ECB Occasional Paper Series, No. 236, November 2019.

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坂口 純也

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金融調査部
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