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ベンチャー企業の関心が高まるTOKYO PRO Market

2020年08月25日

政策調査部 主任研究員 神尾 篤史

東京証券取引所(東証)にあるTOKYO PRO Marketという市場をご存じだろうか。東証には市場第一部、市場第二部、JASDAQ(スタンダード、グロース)、マザーズという市場区分があるが、TOKYO PRO Marketはそれらと同じ株式市場の一つである。その特徴はプロ投資家(特定投資家及び非居住者)向けの市場であるということであり、原則として一般の投資家は取引できない。市場に参加できる投資家をプロに限定することで、他の株式市場よりも緩和された上場基準や開示制度が設定されている。

8月7日時点で36社が上場しているが、新興企業327社が上場するマザーズと比べるとだいぶ少ない。マスコミで報道されることがあまりないため知名度が低く、市場参加者が少ないため流動性が必ずしも高くないことなどが、上場企業数が限定的である理由と思われる。とはいえ、新規上場企業数は2017年7社、2018年8社、2019年9社と、近年は着実に増加してきている。

ベンチャー企業に投資し、売却益を得ることを事業としている企業が、昨年TOKYO PRO Marketに上場した。この企業は、①信用力の向上、②資金調達の多様化、③マザーズなどへの上場を見据えたステップアップ、④経験値アップ、という4つを上場の目的に挙げている。④の経験値アップとは、TOKYO PRO Marketへの上場とその後の投資家からの評価を通じて自らが得た経験を投資先であるベンチャー企業の育成に活かすということであろう。また、大きな効果が得られたのは、①の信用力の向上であるという。ベンチャー企業へ投資を検討する際に、自らが東証に上場していることが当該企業とのコミュニケーションを円滑にし、期待の持てる投資へとつながるということだろう。

では、ベンチャー企業のTOKYO PRO Marketへの上場に対する関心はどうか。上述した企業によれば、その投資先であるベンチャー企業の関心は、体感では以前よりも強まってきているという。上場に際して時価総額、流通株式時価総額などの形式基準がないTOKYO PRO Marketは、東証の他の市場よりも上場までの時間が短いということが理由の一つのようである。新興企業向けであるマザーズ市場の上場基準は時価総額10億円以上、流通株式時価総額5億円以上などとされており、企業設立から上場基準を充たすまでに一定の期間を要することは確かであろう。(なお、マザーズ市場については、上場機会を拡大させる観点から流動性に関する基準の緩和が今年11月1日に施行予定である。)

TOKYO PRO Marketの認知度はまだ低いが、今後はベンチャー企業の経営者の目に留まる回数が増えることを期待したい。上場のハードルが思ったほどには高くはなく、上場することの利点を現実に活かせるかもしれないという認識が広がっていけば、上場企業数が増えていく可能性は大いにあるのではなかろうか。

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