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フォワードルッキングな引当の導入は広がるのか

2020年07月20日

金融調査部 研究員 藤野 大輝

金融検査マニュアルが2019年12月に廃止された(※1)。このマニュアルは、金融庁が金融機関を検査する際に用いる手引書であり、金融機関にとっての業務の指針でもあった。しかし、一律のチェックリストの形をとっていたため、金融機関の目利き力が低下する、過去の実績のみに依拠する、といった問題が指摘され、廃止に至った。

これに伴い、金融庁は「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」を策定した。当文書の中で、特に貸倒引当金について、過去の貸倒実績だけではなく、足元や将来の情報を引当に反映することを評価するとしている。

将来の情報を引当に反映する、いわゆる「フォワードルッキングな引当」の導入は、国際的な潮流である。国際的な会計基準であるIFRSでは2018年から導入されており、米国の会計基準でも2020年から一部金融機関等を対象に適用されている(※2)。

IFRSでは、過大なコストや労力を掛けずに入手可能な、過去の事象、現在の状況、将来の経済状況の予測についての、合理的で裏付け可能な情報を反映する必要がある、とされている。海外金融機関のAnnual Report等を見てみると、例えば、GDP成長率、インフレ率、失業率、住宅価格、株価などの将来予測を、いくつかのシナリオに分けて行っている。各シナリオに重みづけをした上で、各種要因をデフォルト率や予想損失額に反映している。

一方、わが国においては、会計基準でフォワードルッキングな引当が求められているわけではなく、企業会計基準委員会(ASBJ)でも会計基準の開発に着手することが2019年10月に決まったものの、開発の目標時期が定まっていない段階である。

ただ、金融検査マニュアルが廃止されたこともあり、2020年6月に開示された、3月決算の上場金融機関の有価証券報告書の中には、フォワードルッキングな引当について言及しているところも見受けられた。具体的には、景気予測や新型コロナウイルス感染症の影響を引当に反映するといったものであったが、先述の海外金融機関のような、見積りの詳細なプロセスやシナリオごとに予測した経済指標の数値の開示などはなかった。

フォワードルッキングな引当は、国際的な潮流であり、今後も金融機関において導入が進んでいくものと考えられる(※3)。早めに、予防的に、デフォルトに備えた引当を行い不測の事態への耐性を高めるという効果が考えられるが、だからといって恣意的に引当額を決めることが許容されるものではない。フォワードルッキングな引当を導入していく際には、どのように将来の情報を引当に反映したのか、そのプロセスをいかに透明化するかが重要ではないだろうか。金融機関においては、導入の方法を検討するだけではなく、合理的なプロセスの構築とその詳細の開示が期待される。

(※2)ただし、新型コロナウイルス感染症の影響により、国家緊急事態終了か2020年末までは適用を延期することが可能とされている。

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藤野 大輝

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