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若者の住宅購入:増加の背景とそのリスク

2019年08月05日

調査本部 渡邊 吾有子

住宅を購入する若者が増えている。20代と30代の持家比率は2000年にそれぞれ20%、29%だったが、2018年には46%、64%へ上昇した。40代以上の持家比率はその間に横ばいで推移しており、住宅購入者の若年化が進んでいる(※1)。

背景にあるのは若年層の購買力の向上だ。息の長い景気回復や人手不足により雇用・所得環境が改善したことに加え、共働き世帯が増加したことから、世帯ベースで見た所得水準は以前よりも上昇している。

住宅購入者の負担が政策的に軽減された要因も大きい。日本銀行の異例の金融緩和策によって住宅ローン金利が大幅に引き下げられたことに加え、住宅エコポイント制度や消費増税時の住宅購入支援策(住宅ローン減税の拡大やすまい給付金の創設)などが実施された。その結果、比較的所得水準の低い世帯であっても住宅を購入することが容易になった。

だが、若年層を中心に政策的に活性化された住宅市場は、長い目で見れば大きなリスクをはらんでいる。例えば、景気循環の観点からは「需要の先食い」が起きている。住宅や家具・家電などの関連消費は、高額で波及効果が大きいだけに、景気刺激策の対象とされやすい。多くの人にとって住宅は一生に一度の買い物であり、住宅購入者が若年化しているということは、本来であれば5年後、10年後に顕在化するはずであった住宅需要が前倒しされたことを意味する。それだけ先々の住宅需要や一部の関連消費は減少しやすいということであり、将来的な景気対策の効果を低める可能性がある。

住宅価格の上昇による家計の負担増にも留意したい。地価や人件費、資材コストが上昇する中で住宅需要が政策的に刺激された結果、例えば首都圏の新規マンションの平均価格は2000年の約4,000万円から2019年6月には6,000万円近くまで上昇している(※2)。若年層の住宅購入は増加した一方で、住宅ローンの負担は重くなっているのが実態だ。

さらに、若年層の購買力が向上した背景にも注意が必要だ。労働者の所得環境は、近年20代、30代を中心に上昇したが、裏を返せば世代間の賃金格差が縮小しているということだ。大きな買い物をする際には、将来の所得向上を見込んだローン設定をするケースもあるが、賃金のフレキシブル化が進む中、そうした前提も崩れるだろう。将来、所得が想定よりも向上しない一方、ローン返済は続くという事態に陥る家計が増加しかねない。

若年層ほど将来の不確定性は増す。若いうちから住宅が買える環境は一見すると好ましく思えるが、良いことばかりではないようだ。

(※1)総務省「家計調査」
(※2)不動産経済研究所「首都圏マンション・建売市場動向」

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