2019年03月25日
書店の減少が止まらない。日本独特の出版産業の構造に加え、アマゾン・エフェクトも相まって明るい未来は描けそうにない。1999年には22,000店を超えていた書店数も直近では12,000店に届かず、20年弱で実に10,000店以上、約半分近くが消滅している計算だ。ガソリンスタンドに写真館。この20年を振り返れば書店以外にも厳しい業界は他にもある。だが、本屋さんだけは絶滅危惧種にしたくない。本の背表紙フリークである筆者は心の底からそう思う。
日本人は厳しい環境下で頑張る人を応援したくなるようで、筆者も例外ではない。というわけで今回は、リアル本屋さんの「挑戦」と「実験」にエールを送りたい。一つは敢えて「入場料」をとる大型書店。今一つは無人の野菜直売所のような「店員のいない」古本屋である。
145坪の挑戦
38年の歴史に幕を下ろした青山ブックセンター。その約145坪の跡地に大手出版取次の日本出版販売(日版)の子会社リブロプラスが大型書店「文喫」を昨年12月にオープンさせた。入店の際に1,500円(税別)の入場料を支払う。小腹を満たす喫茶室や閲覧室、研究室を備え人文科学、自然科学、アート、デザイン等の書籍約3万冊がそろう。単なるブック&カフェではない。コンセプトは「本と恋に落ちる、本と出会うための本屋」。書棚は著者やジャンルで分けすぎることなく、文庫もハードカバーも豪華本もミックスされているところが新しい。スタッフは白衣をイメージしたおしゃれな上着を着用、本と恋に落ちる「瞬間」を意識したピンクをイメージカラーにしたレトロな雰囲気の店舗も心憎い。対価としての入場料をどう考えるかに個人差はあると思うが、いずれにせよ小売業界の常識をひっくり返す「145坪の挑戦」であることに間違いはない。
2坪の実験
一方、三鷹駅北口から徒歩15分と決してアクセスが良いとは言えない三谷通り商店街の一角に「BOOK ROAD」という名の古本屋がある。24時間365日営業の無人店舗であり、会計はカプセルトイ機(いわゆる「ガチャガチャ」)でお買い物袋を購入することで済ませる。失礼ながら本が持ち逃げされるのでは?と思うのだが、2012年のオープン以来黒字を確保しており経営は順調という。店員に気兼ねすることなく、深夜でも本との対話が楽しめる。「いつかは本屋さんになりたい」「自分の蔵書を無駄にしたくない」と考えていた大手IT企業の社員が実現にこぎつけた社会実験が端緒だ。人の善意や夢、そして社会課題への意識が一体となって本との出会いをデザインしていく。まちの冷蔵庫としてコンビニが生活に密着しているように「まちの本棚」を目指しているBOOK ROAD。まさにたった一人の「2坪の実験」といえるだろう。
買わなくても入場料をとる大型書店と持ち逃げしようと思えばできる無人ミニ古書店。リアル本屋さんの風変わりな取り組みを皆さんはどう読みとくだろう。モノからコトへのシフトの中での顧客体験価値の重要性が高まっている。模範解答はこんな感じだろうか。ただ、筆者は「本屋をあきらめない」姿勢が「いいじゃないか」と素直に思う。セレンディピティ(偶然の出会い、予想外の発見)が起こりやすくなる演出が進化し、本との向き合いかたが変わっていく。わくわくしないだろうか。
米国ではデジタルデトックスの潮流から電子書籍の売上が減る一方、紙の本が盛り返しつつあるという。「リアル店舗こそ大事」そんなやせ我慢を決め込むつもりは毛頭ない。しかし、本との出会いを大切に思うリアル書店の存在価値はどこにあるのか。発想とセンスでまだまだ本屋はブレイクスルーするはず…そう思いを巡らせながら、泊まれる本屋®『BOOK&BED』池袋本店で「世界の美しい本屋さん」(清水玲奈、エックスナレッジ刊 2015年)を片手に寝落ちする筆者であった。
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- 執筆者紹介
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コンサルティング企画部
主席コンサルタント 林 正浩
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