インターンシップは若者の「リアリティショック」を防げるか

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2019年01月28日

  • 菅原 佑香

2020年4月入社予定の学生向けの採用に関わる広報活動がいよいよ3月から始まる。企業は会社や業界全体に対する理解を深めてもらうきっかけの一つとして、インターンシップを実施している。2020年4月入社予定である学生の約9割がインターンシップに参加した経験を持っており(※1)、多くの学生が仕事への理解を深めたり、職業適性や将来設計を考えたりする機会としてそれを活用している。

パーソル総合研究所が、大学・大学院・短大卒業後、新規学卒者として企業に入社した者を対象に2018年に実施した調査によると、入社後3年以内の離職率が入社企業のインターンシップに参加していない者は34.1%であるが、参加者は16.5%であるという(※2)。就職後の定着率は、インターンシップに参加した者の方が高い。

しかし、同調査ではこのような結果もある。インターンシップのネガティブな印象を聞いたところ、「企業の表面的な情報しか得られなかった」との回答が44.2%と最も高いというのだ。インターンシップの内容に不満を持つ学生も当然ながら一定程度いる。新卒採用向けのウェブサイトや会社説明会から知り得る情報ではなく、これから職業選択する上で必要な具体的な情報を求めているのかもしれない。

新入社員の早期離職については、就職時の景気動向の影響や若者にこらえ性がないなど、いくつかの要因があると言われている。指摘されることの一つに、入社してから職場で感じるリアリティショック(現実と期待のギャップ)がある。新入社員が新しい仕事をするのに期待を持って入社することが悪いわけではない。入社前に抱いた期待が入社後に仕事の目標ややりがいにつながることも多いわけだが、誤解に基づいた期待や過度に大きな期待は現実とのギャップが大きくなり、不安や幻滅感につながって離職する決断に至ってしまうことになる。

こうしたリアリティショックに陥ることを防ぐためには、インターンシップ等の機会を通じて、短期間でもビジネスの現場に触れ、企業の中身や職場の雰囲気、具体的な仕事内容についてある程度理解してもらった上で学生にエントリーしてもらうのが効果的である。各企業が自身の業界や仕事内容のポジティブな面とネガティブな面の両方を伝えることは、学生が誤った認識に基づいて職業選択をしないことの助けとなり、結果的にその企業の人材の定着率を高めることになるだろう。

学生の側も思い込みによって「こんなはずではなかった」と失望して離職してしまうことがないよう、インターンシップをうまく活用して、自分に適した企業や職業を選択することが求められるだろう。

(※1)株式会社ディスコ(2019)「20卒学生の1月1日時点の就職活動調査 ~キャリタス就活2020学生モニター調査結果(2019年1月発行)~」
(※2)パーソル総合研究所(2019)「企業インターンシップの効果検証調査」

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