2019年01月21日
「データは21世紀の石油」という言葉を聞いたことはあるだろうか。21世紀初頭からコンピューター等の普及は急速に進み、今や日本人の80%以上が日々ネットワークを利用しており、60%以上がスマートフォンを持っている(※1)。企業はネットワークを通じてあらゆるデータを取得し、そのデータという資源を様々な商品やサービスに活用している。
今やデータは企業にとって不可欠であり、まさしく「21世紀の石油」と言える。ならば、データの源泉である私たち個人は、いわば「21世紀の油田」となるだろうか。現状、個人は意思なき油田であると言っても過言ではない。巨大なプラットフォーマーがデータの採掘・管理を行い、企業とやり取りをして利益を得ている。個人が自らのデータの管理を行うことはほとんどなく、利益が目に見える形で還元されることも少ない。
しかし、個人は意思なき油田ではなく、本来は個人のデータの権利は個人に帰属するはずだ。こうした考えから、昨今では「データポータビリティ権」という権利が提唱されている。データポータビリティ権とは、個人が企業から自分に関するデータを受け取る権利、もしくはそのデータを他の企業に移す権利のことを指す。これにより、個人は自由にデータを企業から取り戻し、他の企業のサービスに乗り換えることが可能になる。データポータビリティ権はEU一般データ保護規則(GDPR)で規定されており、日本でも検討が行われている(※2)。
今後は、個人が企業にデータを採掘・管理「される」時代から、個人が自分でデータの管理・提供を「行う」時代へと移り変わっていくのではないだろうか。この新たな時代には、個人のデータが望ましくない企業に勝手に提供されることは少なくなるだろう。
一方で、個人は自分のデータを自分で管理しなければならなくなる。個人はこうした状況に備え、自分のデータの扱い方を考えておくべきではないだろうか。どのような企業になら自分のデータを提供してもよいかを検討するとともに、データの管理方法についても考えておきたい。例えばパーソナルデータストア(PDS)を用いて自分でデータを管理したり、情報銀行に自分のデータの管理を預託することなどが想定される(※3)。
個人は意思なき油田ではなくなるだろう。そのときまでに十分な備えと心構えをしておくことが求められている。
(※1)平成29年通信利用動向調査より
(※2)経済産業省・総務省「データポータビリティに関する調査・検討会」
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- 執筆者紹介
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金融調査部
研究員 藤野 大輝
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