グリーンボンド:持続可能な社会の構築に向けた投資

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2018年12月13日

  • 伊藤 正晴

国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」では、「目標13 気候変動に具体的な対策を」などの環境に関する目標が掲げられている。また、気候変動に関する国際的な枠組みであるパリ協定では、各国が温室効果ガスの排出削減の目標を提出し、さまざまな取り組みが進められている。これらの目標を達成するには巨額の資金が必要とされ、その資金の調達が課題となっている。資金調達の一翼を担うものとして関心が高まっているのが、調達資金の使途を環境改善効果のある事業(グリーンプロジェクト)に限定して発行されるグリーンボンドである。

グリーンボンドは、2007年に欧州投資銀行(EIB)が発行した「Climate Awareness Bond」が最初とされ、その後、世界銀行などの国際金融機関、地方自治体、民間金融機関、事業会社などに発行主体が拡大している。世界のグリーンボンドの年間発行額は、2010年が39億ドルであったのが2013年には110億ドルとなり、翌年の2014年には366億ドルへと急拡大している。市場の拡大はさらに続き、2017年は1,608億ドルに達している。2018年は10月までで1,169億ドルである。また、日本の企業などによるグリーンボンド等の発行実績も、2014年は337.5億円であったのが、2017年には2,223.0億円、2018年は11月時点で4,529.0億円に達している。グリーンプロジェクトの資金ニーズの拡大や、投資家の関心の高まりがうかがえよう。

グリーンプロジェクトの資金に充てると謳って発行された債券でも、本当にその調達資金がグリーンプロジェクトに充当されるかわからない。このような状況を改善し、グリーンボンドの定義やプロセスの透明化を図るために2014年に策定されたのが、国際資本市場協会(ICMA)を事務局とするグリーンボンド原則(GBP)である。GBPは、「調達資金の使途」、「プロジェクトの評価・選定のプロセス」、「調達資金の管理」、「レポーティング」を核としており、グリーンボンド市場の拡大を後押ししている。また、日本では2017年に環境省がグリーンボンドガイドラインを作成している。これらに準じて債券が発行されることで、グリーンボンドの環境改善効果に関する信頼性などが確保されよう。

グリーンボンドは、機関投資家などを対象として発行されるもの、個人向けに発行されるものがある。日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)の「個人向け金融商品におけるサステナブル投資残高」に、国内で個人向けの金融商品として販売されているインパクトインベストメント債券のリストが掲載されている。このリストによると、2013年に販売されたインパクトインベストメント債券は18本で、そのうち4本の商品名がグリーンボンド、2本がクリーン・エナジー・ボンド、1本が国際金融公社(IFC)の発行するグリーンIFC債であった。2014年は19本のうち9本がグリーンボンド、1本がグリーンIFC債で、グリーンボンドや環境関連の債券が急増している。直近の年間の発行状況を見ると、2017年は20本中18本がグリーンボンドとなっている。個人投資家のグリーンプロジェクトへの関心が高まっていることがうかがえよう。

地球温暖化など環境関連問題への関心が高まっている。グリーンボンドは、一般の債券とほぼ同様の条件で発行されるため、投資家に同様のリターンが得られるならば環境問題の解決に役立つ方を選択するという行動を促そう。また、資金の調達に加え、グリーンプロジェクトなどに関する情報開示を進める効果も考えられる。グリーンボンド市場のさらなる拡大と調達資金の適切な活用が、持続可能な社会の構築に資することが期待される。

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