なぜ、軽自動車販売は底堅いのか?

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2018年11月05日

  • 経済調査部 研究員 廣野 洋太

巷では2019年10月の消費税率引き上げが話題となっているが、2014年の消費増税では耐久財消費がなかなか回復しなかった。この背景としては、リーマン・ショック後に打たれた家電エコポイントやエコカー減税などの景気刺激策が需要を先食いしてしまったことが挙げられる。

自動車(※1)販売については、2015年の軽自動車税引き上げなどの影響もあり、2016年の半ばごろまで減少傾向が続いた。そして2017年の初めにかけて回復を見せたがそれ以降は横ばい圏での推移が続いている。ただし、自動車販売を乗用車(※2)と軽自動車に区別して見ると、前者は軟調な一方で、後者については緩やかな増加傾向が続いていることが確認できる。

では、なぜ乗用車と軽自動車は異なる動きを見せているのだろうか。主因として考えられるのは、消費者負担の差である。2017年度の消費者物価で軽自動車と乗用車を見ると、軽自動車は2014年度比▲0.1%であるのに対し乗用車は同+1.2%であり、乗用車の負担が増している。

もちろん自動車購入においては税負担も大きいので、前述の軽自動車税の引き上げも織り込む必要がある。しかし、その引き上げ幅は年間3,600円(※3)であり、価格差の拡大と比較すれば軽微だろう。

さらに、軽自動車税が引き上げられた一方で、それまで自動車税にのみ適用されていたグリーン化特例が2015年からは軽自動車税にも適用されるようになっていることもプラス材料だ。軽自動車のグリーン化特例は、電気自動車等であるか、もしくは一定の燃費基準を超えていれば軽自動車税が減税される仕組みである。

また、軽自動車の相対的な優位性が高まっている背景には消費者負担以外の要因が効いている可能性もある。軽自動車は乗用車と比べ車体が小さく軽い。そのため、乗用車と比較すると追突事故などに著しく弱いというイメージがあった。しかし、近年は自動ブレーキ装置が搭載された軽自動車が増えるなど、安全面でのマイナスイメージが軽減されている可能性がある。

先行きについても軽自動車の優位性は変わらないと考えられる。今後も1世帯当たりの人数は減少が見込まれ、少なくとも自家用車に関しては「大きさ」や「広さ」を重視するユーザーは減っていくだろう。また、高齢化が進む一方で比較的人口密度の低い地域では公共交通機関の利便性が低下していく可能性がある。軽自動車は車体がコンパクトであるため長距離移動には向かない一方、操作性が高く日常の「足」として利用されることが多い。そのため公共交通機関の利便性が低下してしまった地域の高齢者からは高いニーズがあるのではないだろうか。

(※1)貨物用は含まず、乗用の自動車のみを対象。
(※2)総排気量660㏄、長さ3.4m、幅1.48m、高さ2.0mを超える乗用の自動車。
(※3)四輪以上の自家用車に適用される標準税率の引き上げ幅。

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