再び来るかミャンマーブーム

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2018年11月01日

  • 佐藤 清一郎

約5年前、アジア最後のフロンティアとして大ブームとなったミャンマーだが、いつしかブームは去り、人々の記憶から薄れつつある。最近では、経済が好調なベトナムやフィリピンなどに人々の関心が集まっている。企業及び投資家は、より良い投資機会を求めて世界中を動いているので、収益があまり期待できないミャンマーへの興味が薄れるのも致し方ないところではあるが、ミャンマーの資本市場育成支援に携わっている立場としては、やや寂しさも感じざるを得ない。

現状ミャンマーは、成長のボトルネックとなっている基礎的インフラ不足を解消すべく、日々努力している状況である。残念ながらミャンマー流ということで、物事の進展が遅く目立った成果が見えにくい状況ではあるが、後退しているとの印象はない。日本が主導して開発が進んでいるティラワ経済特別区への企業進出も予想以上の速さで進んでおり、外国企業による技術やノウハウの移転は着実に進展していると言ってよいだろう。

序章が終わったにすぎないミャンマーの次なる見どころは何かと考えた場合、ヤンゴン駅周辺を含むダウンタウン再開発プロジェクトが、その有力な候補になるかと思われる。現在のヤンゴン駅周辺は、ごみごみした感じが否めないが、このプロジェクトの完成図を見ると、ヤンゴン駅周辺の景観が近代都市へと変貌して、まったく異なった印象を人々に与えると予感させる。

主な再開発プロジェクトは3つである。第1は、中国、シンガポール、ミャンマーの合弁企業が手掛けているヤンゴン駅周辺再開発、第2は、三菱地所、ヨマストラテジックなどが手掛け、大成建設とミャンマーの合弁企業が施工を担当しているミャンマー国鉄本社ビル跡地周辺再開発、第3は、東京建物が手掛けフジタが施工を担当している軍事博物館跡地開発である。日本が手掛ける2つのプロジェクトに関しては、高級化路線狙いとなっており、オフィス、コンドミニアム、ショッピングセンター、5つ星ホテル(ペニンシュラ、オークラ プレステージ、ウェスティン)等の建設が含まれている。プロジェクトの完成までの期間は、ヤンゴン駅周辺開発が、最も長く8年程度となっているが、日本が手掛ける2つは、3~4年程度であり、東京オリンピック・パラリンピックが終わった次の年2021年あたりには、かなり全容が明らかになる模様である。近代都市に生まれ変わったミャンマーが、軍事政権の民政移管後のブームから約10年経過して、再び人々の注目を浴びることになるかもしれない。

生まれ変わったミャンマーが外国の注目を浴びるかどうかを考える上で重要なのは、やはり、プロジェクト完了時期の経済状況がどうなっているかである。立派な複合施設が完成し先進国都市並みの景観となったとしても、経済活動が、それほど活発でなければ、施設の有効活用は望めないからである。経済活動が盛り上がっていれば、完成した複合施設への需要は外国企業を中心に大きいものとなり、新たなステージの幕開けを感じさせることになるが、逆に、あまり景気が良くなければ、前回ブームと同様に、期待外れで終わってしまうかもしれない。この場合、日本の関係するプロジェクトは、高級化路線での開発となっているため建物の不良資産化が懸念されることになる。

あと4年ほどの間で、経済状況を見極めていくポイントは、基礎的インフラの整備がどの程度進展しているのか、輸入代替や輸出主導を可能とする企業がどの程度育ってくるのか、そして、財政・貿易の赤字体質をどの程度改善できているのかを確認し続けることである。インフラ整備が進み、外貨節約・稼得できる企業がある程度育ち、かつ、財政・貿易赤字体質に改善の兆しが見えれば、海外からの直接投資は増加してくることが期待され、経済発展にプラスとなってくる。ミャンマー政府には、成長に向けたしっかりとした道筋に基づく適切なインフラ整備計画、輸出企業育成策、財政・貿易赤字体質改善に向けた施策、外国投資家が参加しやすい環境整備等を期待したいところである。

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