スタートアップの要件:熱きリーダーと担い手

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2018年08月13日

  • 大村 岳雄

先般、東京・五反田でスタートアップ企業を支援する交流団体「五反田バレー」の発足が発表された。かつて、1999年初めに渋谷を拠点とするインターネット関連のベンチャー企業の経営者らが発表した「ビットバレー構想」を想起した人も少なくないだろう。当時その動きは六本木にも広がり、六本木ヒルズ森ビルに本社を置くITベンチャー企業も相次ぎ、「ヒルズ族」なる流行語も生まれた。今回の五反田は、渋谷や六本木に比べ、オフィス賃料も比較的手ごろで交通の便がよく、企業が集積しており、企業同士の連携も模索しやすいという特徴があり、品川区も協定を結び、連携を図っている。
自治体だけでなく国もベンチャー育成には注力している。
経産省が主導するグローバル起業家育成プログラム「始動Next Innovator」(※1)は今年で4年目を迎える。この始動プロジェクトは、「意識改革」、「スキル向上」、「事業化促進」、「成長促進」の要素を習得し、参加者自身が企画した事業計画を実現するレベルまで到達させることを目指している。また、別の施策として、今年度からJ-Startupと題して、日本で活躍する1万社のスタートアップ企業を対象に厳正な審査を行い、年間約100社のスタートアップ企業のグローバルな展開を支援する仕組みも開始している。

スタートアップ企業において、その担い手となる人材が重要であるのはいうまでもない。
その担い手を考えるとき、筆者は、かつて携わった地方活性化の調査(※2)で取り上げた4つの成功事例を思い出す。4つの事例の共通点として、「冷静な地域認識」「移出に焦点を宛てた取組み」「外部者視線による戦略」「外部からのリーダーシップと内部人材の重要性」「議会・住民の理解と協働」の5つがあげられた。4つの事例の概要は下表のとおりである。

十日町市・津南町(新潟県)では、大地の芸術祭として3年に一度、地域住民ぐるみで田畑にオブジェを飾り、観光客を集めている、広島県では県主導で地域密着/専門家集団による投資ファンドを立ち上げて地域企業に投資を実施。鹿児島県の地域金融機関では、畜産業を中心に融資を拡大、日置市(鹿児島県)では、地域住民にオリーブの栽培を推進している。いずれのインタビューを通じても、それぞれの事業を推進する熱意あるリーダーとそれを支え担い手となる地域住民が存在していた。

スタートアップ企業にも、これら事例に共通するポイントは十分に参考になる。これからのスタートアップ企業の活躍に期待したい。

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