「共働き世帯」と「所得の割に伸びない消費」の意外な関係
2018年08月06日
アベノミクス開始以降の日本の消費を取り巻く環境で大きく変わったことの一つとして、共働き世帯の増加ペースの加速が挙げられる。人手不足を背景に労働条件の改善が進んだ結果、女性の労働参加が進み、片働きから共働きになった世帯が大幅に増えたのである。
他方、消費に関してはアベノミクス開始以降の所得増と比較すると弱いとの指摘がされている。所得のうちどれだけ消費に回すかは、消費性向という指標で測られるが、実務的には名目個人消費を名目可処分所得で割った平均消費性向が使われることが多い。
実は、共働き世帯の増加ペースの加速は消費性向の低下に深くかかわっている。最もシンプルな理由としては、共働き世帯は片働き世帯と比較して高所得だからだ。消費には所得と連動しない固定的な部分があるため、所得水準が高くなれば固定的な消費の割合は低下する。結果として共働き世帯(所得水準が上がった世帯)の割合が増すことで、経済全体では消費性向が低下する。
しかし、足下で起こっていることはもう少し複雑である。共働き世帯の分布を夫の仕事からの収入階層別に見ると、夫の収入が400万円以上の世帯で共働き世帯の割合が上昇している(図表)。つまり、相対的に高所得な世帯で共働き化が進んだのである。先ほども述べた通り、所得が高ければ高いほど消費性向は低下するため、高所得層で共働き化が進めば、全体で見た消費性向は低下する。
では、足下の共働き世帯の増加ペースの加速は、なぜ高所得世帯でも進んだのだろうか。一つには、夫の収入が相対的に少ない層では女性の労働参加がすでに十分進んでいたことが考えられる。こういった世帯では夫の収入を補完するために多少労働条件が悪くとも働く必要があったのではないだろうか。一方、足下では所得とは別の要因として、労働条件の改善などが行われており多様な働き方を選択しやすくなっている。つまり、片働きである程度余裕がある世帯でも共働きを選択するだけのインセンティブが今はあるのだろう。
ここで注意したいのは、今まで挙げた要因による消費性向の低下は必ずしも悪材料ではないということだ。足下の消費性向の低下は、シンプルに所得が増加していることや高所得層に偏った共働き化に起因している。そして、高所得層での共働き化は労働条件の改善によって起きており、多様な働き方ができるようになったと考えれば、消費性向の低下それ自体は問題ではないのではないだろうか。
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