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日本型養殖ビジネスの確立を

2018年07月05日

経営コンサルティング第二部 主任コンサルタント 大川 穣

養殖ビジネスに参入する企業が増加している。このほど水産庁が養殖業への企業参入を促進する漁業権の規制緩和を盛り込んだ漁業改革案をまとめたことで、今後も強化・参入の動きが加速することが予想される。キーワードは「資源作り」と「成長産業への転換」だ。

世界的に水産需要が高まる中、天然魚の漁獲高(漁業生産量)が頭打ちとなる一方、養殖業生産量は増加している。国内では漁業・養殖業生産量の減少が続く中、水産物を輸入に頼る構造が出来上がり、川下で安定した水産資源を確保することの重要性が高まっている。

ほんの一例ではあるが、今回すでに養殖ビジネスに参入している企業を調べてみた。これらの企業は地方自治体や地域の漁協と連携し、子会社を設立するかたちで参入するケースがほとんどだが、その目的は業種によってさまざまである。総合商社や食品製造であれば、クロマグロの完全養殖等の新規分野で「水産資源の持続可能な利用」や「安定的な調達と供給」といった目的を掲げ、資源づくりを使命とした川上の事業に取り組んでいる。川下に位置する企業であれば、特定魚種にターゲットを絞り、「本業商品の付加価値アップや差別化」等を目的として、サプライチェーンの川上から川下まで一貫した体制を構築し、SPA(製造小売業)型のビジネスモデル構築を目指している。

ここでいずれの企業にも共通している点は、地域漁業者の置かれている現状を社会的課題として捉え、地域の活性化に貢献することを目指していることだ。企業は政府が目指す養殖業の成長戦略という枠組みの中で、地域性の強い養殖ビジネスを自社のバリューチェーンや事業ポートフォリオに関連付けて新たな価値創出を目指し、経営戦略として推し進めている。

今、水産業界では養殖ビジネスに対して、企業から熱い視線が注がれているが、ビジネスとしてのハードルは高い。養殖ビジネスは漁業インフラとしての機能を要し、投資額も少なくはない。販路が確保されたとしても出荷に至るまでの餌料コストをクリアし収益性を確保することや、市場価格を維持できるだけの養殖技術の革新性を担保することが求められる。

長らく低迷していた水産業ではあるものの、こうした企業の動きはこれまでの慣習ややり方を打ち破るチャンスであると考えられる。地域に根を張り、漁業の担い手になるという覚悟を持った企業の中から、日本独自の養殖ビジネスモデルが確立され、世界市場を席巻する日が訪れることを期待したい。

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大川 穣

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