日本遺産の発表と経済面からの地域活性化
2018年06月07日
2018年5月24日、平成30年度「日本遺産」の認定結果が発表された。昨年度までに認定された日本遺産の数が67件であるから、今年度認定分の13件を加えると合計で80件が認定されたことになる。日本遺産については、「地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを『日本遺産(Japan Heritage)』として文化庁が認定するもの」(文化庁ウェブサイト)とされている。さらに言えば、歴史的に価値のある遺産に対して保護だけでなく、認知度を高めて地域の活性化に役立てようというものである。観光客数が増え、消費額が増えれば地元経済が潤うことになる。
筆者自身、今年のゴールデンウィークに家族と1泊2日で日本遺産を見てきた。平成27年度に認定された「近世日本の教育遺産群 -学ぶ心・礼節の本源-」の一部を成す、茨城県水戸市の「偕楽園」と「旧弘道館」を訪れたのである。今年は暖かかったためか、見頃のはずのつつじも開花時期をほぼ終えてしまっていたのは残念であったが、藩校としての「旧弘道館」と休息の場としての「偕楽園」が一対であったことがよくわかり、非常に意義のある旅であった。
しかし、筆者としては少々気がかりな点もある。果たして経済面から地域の活性化に貢献できたのかという点である。費用で大きな割合を占めるのが水戸駅までの電車賃と駅前のホテル代であり、入館料などは微々たるものにすぎない。到着日の昼食と夕食は地元の店で取ったものの、あとは東京にいても入ることができるチェーン店であった。バスも利用したが、現地を見て歩くだけでお土産を大量に購入しなければ意外とお金がかからない。一般的な観光客の行動とそれほどかけ離れているとは思わないが、一世帯としてみれば、地元への経済的な寄与は大きくなかったものと思われる。
日本遺産認定をきっかけに観光客数が増えることは、地元に活気を与え、一般的にはメリットは大きいと考えられる。他の観光資源も同様であるが、日本遺産の積極活用で経済的なメリットを得ようというのであれば、さらなる出費を誘うような工夫があってよい。例えば、その地域の歴史・文化を活かした有料イベントを通年で開催し、ファンになってもらうことでリピーター化を図る、関連グッズを販売するといった展開も考えられる。半面で、地元住民にとっては騒音、渋滞、ごみ問題といったネガティブな要素が多少なりともあり得るため、そうして得た資金が生活インフラの整備など地元住民にうまく還元するよう配慮することも必要となってこよう。
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