欧州と「一帯一路」
2018年02月05日
中国の一大国家プロジェクトである「一帯一路」は、新シルクロード構想とも呼ばれる。元祖シルクロードが中国の絹を中央アジアと中東を経由して地中海沿岸諸国へと輸送した陸路を指していたのに対し、中国の習近平国家主席が2013年に提唱した現代版シルクロードは、陸路の「一帯」と海路の「一路」が組み合わされている。
中国はこの陸路と海路に沿った二つの経済圏を構築するため、政府系ファンドの「シルクロード基金」を設立し、また中国国家開発銀行やAIIB(アジアインフラ投資銀行)も活用して、鉄道、道路、港湾、あるいは通信網などのインフラ建設投資を支援している。「一帯一路」が重点を置くのは、経済政策、インフラ、投資・貿易、金融、人的交流の5分野である。日本での「一帯一路」に関する報道は、ベトナム、タイ、ミャンマーなど東南アジア諸国、あるいはパキスタンで進められているインフラ投資関連が多いが、そのほかにアフリカのケニア、中東のイランなどでも投資案件が進められている。
欧州は「一帯一路」の終点である。そして、中東欧では関連する投資プロジェクトが動き始めた。昨年11月にハンガリーのブダペストで中東欧16カ国と中国の首脳会談が開催され、中国の李克強首相は「一帯一路」実現のため、中東欧諸国に総額30億ドルの投資を行うと約束した。具体化している案件の一つは、ハンガリーとセルビアを結ぶ鉄道の近代化プロジェクトである。中国からギリシャのピレウス港に届いた貨物を、この鉄道を利用して中欧諸国へと輸送することがそのねらいである。なお、中国は、財政再建に取り組むギリシャ政府からピレウス港の管理会社の経営権を2016年に取得し、その後、中国とギリシャはピレウス港を「一帯一路」の重要拠点として開発することで合意している。
「一帯一路」構想に対して、ハンガリーやギリシャでは投資拡大への期待が大きいほか、この1月に訪中した英国のメイ首相も積極的な関与を表明している。欧州企業も大きなビジネス・チャンスと捉えており、例えばアジアでのプレセンスが大きいスタンダードチャータード銀行は、2020年末まで「一帯一路」関連事業に少なくとも200億ドルを融資すると昨年12月に発表した。
一方で、独仏からは警戒する声も聞かれる。ドイツのガブリエル外相は昨年夏に「一帯一路」がEUの分断につながることへの懸念を表明した。ドイツで期待より警戒が強いとみられる背景の一つは、中国企業によるドイツ企業の買収金額がここ数年急増したこと、他方で中国が外資による中国企業の買収を制限していることがあると考えられる。また、この1月に訪中したマクロン大統領は中国が「一帯一路」に包摂される国々に対して一方的に支配力を強めることがないようにと警告した。もっとも、マクロン大統領は「一帯一路」への欧州の関与を否定しているわけではなく、むしろ欧州各国の対応がばらばらであることを問題視している。
欧州では、「一帯一路」構想に対して期待と警戒がせめぎ合っている。ただ、中国の存在感は格段に高まっており、欧州にとって中国との協力は重要性を増している。EUとしてより積極的に「一帯一路」構想に関与することで、中国及び関連国とウィン・ウィンの関係を構築することが肝要と考えられる。
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