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女性活躍の今こそ考えたい男性のキャリア

2018年01月16日

政策調査部 研究員 菅原 佑香

近年、政府が進める働き方改革や女性活躍推進法の施行など、社会全体で女性活躍に取組む機運が高まっている。ただ、一方で男性の働き方はどうだろうか。女性が活躍できる社会とは男性にとっても働きやすい社会である必要があることから、男性労働者を前提に形成された雇用慣行を大きく変えなければならない。


2016年5月にアデコ株式会社が全国の20代~60代の働いている男女2,782人を対象に実施した「働く人のキャリアに関する意識調査」によると(※1)、将来のキャリアプランについて「特に考えていない」と回答した一般社員(役職がない社員)の割合は男性で49.1%と女性の42.5%よりも高い。今後のキャリアを積極的に模索しているのは、男性より女性であった。


もっとも、将来のキャリアプランを考えていると回答した男性(一般社員以外も含む)のうち、将来の先行きが不透明だからなど、自身や社会への不安からキャリアを考える人が約7割いるという。男性が女性に比べてキャリアに後ろ向きなのは、これまでは考える必要がなかった、あるいは、前向きに考える余裕がないということではないか。


性別役割分業意識が依然として残っている中で、男性は長時間労働に象徴されるこれまでの働き方を変えるという選択をしづらく、男性が家族の主たる生計者でなければならないという社会意識のもとで働いてきたことは否定できない。つまり、表に出ていないだけで、男性のキャリアに対する悩みは、女性より深いのかもしれない。


そういえば、あるとき30代の知人男性が「最近、仕事での閉塞感や惰性を感じる」とぼやいていた。しかし、自身のキャリアに停滞感を覚えることは珍しいことではない。キャリアの上昇が見込めるにもかかわらず、仕事の慣れによる定型感や単調感などにより、仕事がある程度一人前にできるようになるキャリア初期から中期にかけて訪れるこうした現象は「キャリア・ドリフト(drift)」と呼ばれている。これは、神戸大学大学院の金井壽宏教授が提唱するキャリア理論のひとつである。


キャリア・ドリフトの状態に陥ることは一見すると良くないことのようだが、本人にとって悪いこととも言い切れないという。就職した後、常に将来見通しばかり考えるのではなく、時には会社の波に流されながら、目の前のやるべきことに集中したり一時的に仕事や会社から少し距離を置いてみたりすることは、自らのキャリアを俯瞰し、組織への見方が変わる良いチャンスだからだ。そうした中で出会うキャリアは、勤務先での配置転換や昇進・昇格によるキャリア形成、他企業への転職や起業、副業など、多様な選択肢が見えてくるだろう。


重要なことは、キャリアを見定めるべき節目が来たらきちんと向き合い、自分が主体的に選択し決めること(キャリア・デザイン)である。節目と節目の間は、漂流する(drift)時期があっても良いのだ。ドリフトの時期に感じた仕事や会社に対する意識のずれに悲観的にならずに、その後のキャリアの核となる仕事の価値観や方向性を見いだすきっかけにつなげていくことを大切にしたい。


年功序列で終身雇用といった日本的雇用慣行は変化しており、会社が敷いたレールに乗っていれば将来の見通しが保障され、それによってモチベーションが維持される時代は終わっている。一人で責任を背負って必死に長時間働き続けるのではなく、男性にも時には立ち止まり振り返る余裕があってほしいと思う。女性には、女性に特化したキャリア教育や研修の機会が用意されているが、“女性活躍”が言われる今だからこそ、男性中心に形成された雇用慣行をどう変えるのか、男性の働き方やキャリア意識にスポットをあてていくことが企業にも男性自身にも求められているのではないだろうか。


【参考文献】
金井壽宏(2003)『キャリア・デザイン・ガイド—自分のキャリアをうまく振り返り展望するために—』白桃書房
山本寛(2016)『働く人のキャリアの停滞—伸び悩みから飛躍へのステップ—』創成社


(※1)アデコ株式会社「働く人のキャリアに関する意識調査

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菅原 佑香

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