成人年齢の引き下げと年金制度

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2018年01月15日

  • 小林 章子

報道によれば、今年1月22日召集予定の通常国会に民法の「成人年齢(成年年齢)」を現行の「20歳」から「18歳」に引き下げる法案が提出される見込みである(※1)。この民法の成人年齢の引き下げは他の法令にも影響すると考えられる。例えば、条文上「成人」「未成年者」などと規定している法令については、自動的に年齢が18歳に引き下げられることになる。他方、「20歳以上(未満)」と規定している法令については、自動的に年齢が引き下げられることにはならないが、民法の成人年齢が20歳であることを前提とした規定の場合は、別途見直される可能性がある。報道では、医師法・公認会計士法など関連法案24本の提出が見込まれているようだ。


この成人年齢引き下げに関しては、今回の見直し以外にも、今後、年金や税制といった、個人の財産形成に直接影響する見直しが行われる可能性がある(図表)。
例えば2015年に自由民主党が取りまとめた提言では、結論として引き下げの対象からは除外されたが、「国民年金法の被保険者」(保険料の納付義務者)の年齢についても議論されたようだ(※2)。現行では、第1号被保険者となるのは、成人年齢と同じ「20歳以上」とされている。今後仮にこの年齢が「18歳以上」に引き下げられた場合、これまで納付義務がなかった18歳・19歳の人々にも納付義務が生じる。仮に納付期間が現行法と同じ60歳未満までとした場合は、少なくとも納付期間が2年間延びることになる。


この影響を最も受けると思われる学生については、現行でも申請により在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」が設けられており、ほとんどの大学生、高校生、専門学校生等は収入要件を満たせば納付の猶予を受けられる(※3)。この制度を利用すれば、仮に年齢の引き下げがあっても一旦猶予を受ければ、ただちに納付する必要はなくなる。ただし、猶予された保険料を一定期間後に追納する際、保険料に利子分を上乗せして納付しなければならないため、結果的に負担額が増えることになる。


周知のように、今後急激に進行していく少子高齢化社会において、年金制度をとりまく環境はますます厳しさを増していくことが予想される。年金制度の維持のための施策として、これまで行われてきた給付水準の引き下げや受給開始年齢の引き上げに加え、被保険者の年齢引き下げが行われれば、現在よりもさらに早い段階から現役世代としての負担が求められることになる。今後はより若いうちから、NISAをはじめとした自助努力での資産形成について考えてみるべきだろう。

今後年齢の引き下げが考えられるもの

(※1)2017年12月27日付時事通信「民法改正案、通常国会提出へ=18歳成人、22年にも施行
(※2)自由民主党政務調査会「成年年齢に関する提言」(2015年9月17日)
(※3)日本年金機構ウェブサイト「学生納付特例制度」、また是枝俊悟「学生時代に免除された国民年金保険料を追納すべきか」(2011年10月11日、大和総研コラム)も参照。

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