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中国の金融リスクについて

2017年12月25日

経済調査部 研究員 永井 寛之

一般的に、債務残高が積み上がっている場合や、トレンドからの乖離が大きい場合には、金融危機を誘発するリスクが高まると考えられている。IMF(国際通貨基金)は2017年の中国の年次報告において、「いくつかの例外を除き、債務残高のGDP比が5年間で30%以上高まった場合は、成長率の大幅な低下や金融危機が発生し、特に、GDP比が100%を超えてから債務が急増したケース(現在の中国が当てはまる)は、みな酷い結果に終わっている」旨を指摘した。また、国際決済銀行(BIS)は2016年9月のBIS Quarterly Reviewの中で、「非政府非金融部門(家計+非金融企業)の債務残高のGDP比のトレンドからの乖離が10%pt以上となった国では少なくとも3分の2の確率で3年以内に危機が発生している」とした。いずれも中国の債務問題に警笛を鳴らすものである。


BIS統計によると中国の非政府非金融部門の債務残高のGDP比率は、2017年6月末で210.2%と金融危機が起きた諸外国よりも高い水準にある。では、中国発の金融危機が発生するリスクをどうみればよいのか。


中国の債務問題で特に注目されるのは、企業債務である。特に、鉄鋼など過剰生産能力を有する企業において債務が積み上がっており、その返済能力が疑問視されている。しかし、この多くが国有企業であり、そのファイナンスのほとんどは政府と密接な関係がある国有銀行によって行われており、貸し剥がしが行われる可能性も低い。


中国の家計部門の債務残高は、日本や米国といった過去に不動産バブルが生じた国と比べてみると水準はかなり低い。さらに、中国では、頭金比率の変更や投資・投機需要のコントロールによって、住宅価格に強い影響を与えてきた。価格が下落する局面はおよそ1年で終了するパターンが続いており、投資家にとって、住宅は有望な投資先であり続けている。こうした状況が大きく変化しなければ、不動産ローンが不良債権化するリスクは限定的であろう。


以上のことから、当面は中国発の金融危機が起きる可能性は低いだろう。しかし、これはあくまでも当面の話であり、中長期的には大きなリスク要因が存在する。


その一つに元安のリスクがある。生産性の上昇率鈍化や元高進行により輸出競争力が低下すれば、経常収支は赤字に転じる可能性がある。投資収益率の低い企業が今後も淘汰されず、対内直接投資の減少傾向が継続すれば、直接投資収支の赤字が定着するだろう。このような中、何らかのショックで資本流出が起きて、元安が加速し、これを人民元の買い支えで対応することで外貨準備は減少するというスパイラルが起きるのであれば、金利を上昇せざるを得ず、急激なバランスシート調整のきっかけとなり得よう。


また、住宅価格の長期低迷のリスクもある。特に、住宅需要を支えていた30~34歳の人口が2021年以降は減少に転じることが予想される。その際、住宅需要が減退したにもかかわらず、住宅供給調整がうまく行われなければ、住宅価格の低迷は長期化し、バランスシート調整が進む可能性があろう。


結局のところ、当面は問題の先送りが可能であろうが、中長期的には金融危機的な状況が生じる可能性は否定できない、とみている。

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