多様性を活かしたまちづくりに向けた施策への企業の参加

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2017年11月08日

  • コンサルティング本部 顧問 三好 勝則

在留外国人数は昨年末で238万2,822人となり、前年末に比べ15万633人(6.7%)増加して過去最高となった。このうち永住者72万7,111人、留学生27万7,331人、ともに統計方法が変わった2012年以降、毎年増加が続いている(※1)。外国人労働者は昨年10月末で108万3,769人となり、前年同期比17万5,873人(19.4%)の大幅増を記録し、過去最高を更新している(※2)

外国人の増加に対応して、情報の多言語化によるコミュニケーション支援などにとどまらず、多様性を地域の活力とするための施策を地方自治体が進めはじめている。参考となるのが、2008年に欧州評議会が欧州委員会とともに始めたインターカルチュラル・シティ(ICC)に向けたプログラムである。ICCとは、文化的多様性を都市発展の資源と捉え、いかにプラスの役割を果たしているか、創造性の源となっているか、多文化間の対話がこの過程においてどのような役割を果たすかを明らかにし、多様性の強みを生かす都市戦略・都市政策を行う都市のことである。ICCプログラムには世界で120を超える都市が参加し、互いの成果を学び共通の課題を解決することを目指している。日本では浜松市が、第1回外国人集住都市会議を2003年に開催するなど多文化共生を推進しており、本年にはICCにも参加して海外の多文化共生都市と連携することを宣言し、欧州評議会からプログラムの専門家が来日して状況調査を行った。この調査で専門家は、行政と市民セクターや関係機関が協力して成果を上げていることを評価する一方で、ビジネスセクター、特に大企業の行動があまり見えないことを課題として指摘した。企業が外国人を労働者としてだけでなく、住民として地域に参加できるように手を差し伸べることの重要性を示している。

また、留学生の進路についての課題もある。私費外国人留学生を対象とする抽出調査で、卒業後の希望について3つまで選択可能な回答によると、「日本において就職」が63.6%で最も多く、次いで「日本において進学」が50.4%で続いており、「出身国において就職・起業」の20.0%を大きく上回っている(※3)。実際の就職・進学に当たっては現在の留学先である地域を離れる人が多く、人材として外国人を求める地域企業の需要とのミスマッチが起きている。この対策の一つとして、地域企業がインターンシップを行うなど求める人材をより明らかにすることで、留学生の就職先としての認識を広げている例が挙げられる。また、企業と留学生をマッチングさせる会議を開催するなど、地域企業が国際化する手助けをしている例もみられる(※4)

多様な人の出会いから新たな発見や発想が生まれることは、企業活動においても地域活動においても共通している。出会いの場を作る努力が企業に求められている。

(※1)法務省入国管理局 平成29年3月公表
(※2)雇用対策法に基づく事業主から厚生労働大臣への届出(厚生労働省職業安定局 平成29年1月公表)
(※3)我が国の大学・大学院、短期大学、専修学校、準備教育機関、日本語教育機関に在籍する私費留学生を対象とした「平成27年度私費外国人留学生生活実態調査」(独立行政法人日本学生支援機構 平成28年9月公表)
(※4)「多文化共生事例集」(総務省自治行政局 平成29年3月公表)

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