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勝負どころの見極めの難しさ

2017年11月07日

中里 幸聖

第48回衆議院議員総選挙が終了してから約半月。今はトランプ米国大統領の来日とそれに続くアジア歴訪が政治関連の話題の中心だろうか。

選挙当日は台風21号の雨の中、やや難儀しつつ昼前に近くの投票所まで妻と行ったが、悪天候にもかかわらず思ったより人が多かった。我が家には現在5人の有権者がいる。次女と三女は朝早めの時間に行ったそうで、お年寄り中心に行列ができていたそうである。ちなみに三女は18歳になったばかりで、初の選挙体験である。投票用紙を折ることを忘れて無理に投票箱に突っ込もうとして、投票立会人に「折っていいですよ」と指摘され、恥ずかしかったそうである(筆者の住んでいる選挙区の投票箱は、投票用紙に比べて投入口が狭い)。長女は夕方に投票所に行ったそうだが、やはりそれなりに人がいたそうだ。しかし、今回の投票率は小選挙区で53.68%と戦後2番目の低さとのことである。

当日夜は各局の開票速報特別番組をザッピング(リモコンでチャンネルを頻繁に切り替えながら視聴すること)したが、投票締切りの20時と同時に選挙結果の大勢が判明し、ほぼ同時に最初の当確が出るのには、毎回驚かされるばかりである。

今回の総選挙は様々な評価があり、様々なドラマもあったが、改めて勝負どころの見極めの難しさを痛感した。

安倍首相の勝負どころの見極めは称賛に値するのではないだろうか。2012年以降の国政選挙での自民党5連勝(衆院選3回、参院選2回)のうち、今回と前回の衆院選2回は安倍首相自らが選挙のタイミングを決定したと言える。2006年の第一次政権の時も周囲には時期尚早との声もあったそうだが、あのタイミングで自民党総裁選に立候補したことが、結果論になるかもしれないが、今につながっていると考えられる。

一方、具体的な名前は挙げないが、今回の総選挙の野党側では勝負どころの見極めの適否が明暗を分けたように思う。国政選挙に限らず、各党の党首選をはじめ政治家の出処進退がかかるような場面で勝負に出るか否かによって、その政治家の将来が大きく変わってしまうことがよくある。これは歴史を見ても多くの事例が挙げられよう。

倉山満氏は『大間違いの織田信長』(KKベストセラーズ、2017年)という著書で、織田信長が勝負どころを見事に見極めて天下に近づいたのに対し、越前の朝倉義景などについて、「共通点は目の前に天下が転がっているのに戦わないでみすみす逃してしまう」と勝負どころで勝負に出なかった事例を挙げている(※1)

歴史を見ても、あるいは近年の政治家の行動を見ても、勝負どころで勝負に出て負けた場合でも、生き延びていればまた機会が回ってくることが多い。一方、勝負どころで勝負に出ないと、その後に機会が訪れる可能性が低くなるか、訪れても勝負どころと認識せずに見逃してしまうように思われる。

岡目八目とはよく言ったもので、歴史は言うに及ばず、選挙でもあるいは自分の周囲の出来事でも、他人の勝負どころはその結果も含めてよくわかる。しかし、自分自身の勝負どころの見極めはやはり難しい。

同様のことは企業経営でも経済運営でも言えるであろう。だからこそ、様々な形で当事者以外からの情報提供、アドバイス、提言などに価値があるのであり、我々シンクタンクもそうした価値を生み出し、発信するべく日夜努力しているのである。ただし、勝負どころを見極めて実行するのは、最終的にはやはり当事者自身であり、その判断力、決断力、実行力がその後の良し悪しを決めることとなる。

それにつけても、自分自身の過去を顧みて、勝負どころで勝負に出られたか否かの確信は、棺桶に入るまではわからない気がする。「人間万事塞翁が馬」か。

(※1)同書135ページ。倉山氏は、ここでは朝倉義景を含めて三人挙げており、もう一人はロシア皇帝ピョートル三世である。あと一人についてはやや生々しいので、関心がある方は同書を手に取ってみてほしい。

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